11月11日(日)
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 真っ暗な闇の中で、ゾロは静かに目を開けた。
 
 長い間同じ姿勢だったのか体は強張るように硬く、壁にもたれるように座らされている。
 意識が覚醒すると同時に、普段とは違う空気を肌が読む。
 ゾロは音を立てない程度に、手首を足首をそっと動かしてみた。ギリッと締め付けられる硬い感触。ロープか何かで縛られているらしい。
 指先にかすかな痺れが残ってはいるが、動きに問題はない。
 
 神経を研ぎ澄ませて、ゾロはそのままゆっくりと辺りの気配を探った。
 チリチリとした空気に産毛が逆立つ。それは殺気というより、ゾロの戦闘に身を置いた時の高揚感ゆえだ。
 
 うっすらと判別のつく物陰で、ここが自室だとわかる。
 どうやらこの付近にいるのは自分と、あともう一人だけのようだ。
「ゾロ…?」
 すぐ傍で感じていたその気配が、小さく身動ぎした。
 
「サンジか」
 ゾロの声を頼りに、ずるずると床を引きずるように気配が近寄ってきた。
 その動きに、サンジもどこかを――恐らくは腕あたりだろう、を拘束されているのだと予測する。
 
「何があった。…怪我とかしてねぇだろうな」
「ああ、俺はなんともねぇ。あの後突然知らねェ野郎が数人入ってきてよ、いきなり捕まって…」
 
 暗闇の中で、さら、とサンジの髪が揺れる音が身近でする。
 
「……なぁゾロ…」
 
 困ったように口篭もったサンジに、ゾロは何も言わずに促した。
「そいつらが、言ってたんだ…ゾロが、どっかの組織の幹部との取引に使えるから、って……」
 不安な声音と一緒に、すぐ傍で触れる息遣い。
 
「ゾロ…てめぇ」
 
 
 押し黙った空気の中で、こくり、と小さくサンジが喉を鳴らした。
  
「一体なにもん……なんだ?」
 
 
 
 
「…俺は…」
 
 ゾロはぐっと腹に力を込めると、暗闇の中のサンジをひたと見据えた。
 
 
 
「俺は――ある組織に属する剣士だ。要人の警護から時には殺しまで全てを行う。……もっとも組織の規模だとか、上の構成だとか詳しいことは知らねぇがな」
 
 
 サンジが暗闇の中で息を飲むのがわかった。
 
 しかしするりと言葉が出てきて一番驚いたのはゾロ自身だ。
 どんな拷問にだって耐えうる自信があった自分が。それがまさかこんなに簡単に吐いてしまうとは。
 
 驚きと同時に込み上げてくるのは嬉しさ。そして久々に自分を驚愕させた相手に対し、ぞくぞくと言い知れぬ鳥肌が立つ。
 ゾロはハハッと大口を開けて笑った。
 
 
「てめぇすげぇな!」
「……あ?」
 暗闇の中で突然笑い出したゾロに、サンジが怪訝な声を上げた。
 
「こりゃ自白剤の一種か?並の薬物は効きもしねぇし食いモンに混ぜた所でどんな些細な味も判別つくのに、それを俺に食わせるとはなぁ…どこの組織の人間だか知らねぇが、凄い腕だ」
 
「な……ッ」
 暗闇の中、サンジが青い目を大きく見開いた。
 夜目の利くゾロにとっては、気配と合間って既にサンジの表情はよく見えている。
 
 がしがしと頭を掻いて、ゾロは再び笑った。
「あーこりゃマジすげぇ。ここまで言っちまう気はなかったのによ」
 
 例えどんな人間で、どんな目的であっても、ゾロには最早関係なかったのだ。
 けれど今思った事はどんどん口から出てしまう。聞かれた事には何でも答えないと気がすまなくなっているらしい。
 
 
「な…なんでわかった」
 じり、と微妙にサンジが後退った。
 
「足音とか、気配や身のこなしの癖でなんとなく」
 初めて会ったあの日から、漠然と感じていたことだった。
 
 ゾロは立ち上がって背後の壁を探ると、パチンと部屋の電気をつけた。
 案の定停電でも元から壊されたわけでもなく、部屋は再び明るくなった。
 眩しさに一瞬瞬きをした瞬間、フッと鋭い風が首の辺りで動いた。
 反射的にそれを避け、目の前に捉えた足を手で受け流す。殺気の篭った風圧がチリッと肌を掠め、更にゾロは笑った。
 軌道を逸らした相手の足を、その勢いを利用して上から床に叩き付ける。
「……ッ!」
 細い体が小さくしなって、跳ねたサンジの顔が小さくしかめられた。
 気分が昂ぶっていて、今はどうも微妙な力加減が出来ないようだ。
 
「料理の腕も凄い上に、腕前も凄ぇ。テメェの武器はこの脚か?」
 自分を睨みつける青い目に満足しながら、ゾロはサンジの膝に乗り上げて物騒な脚の動きを封じて笑った。
 薬のせいもあって、込み上げる嬉しさが半端ない。
 
「参った。ほんと、ますます惚れた」
 
「ハ…?な……?」
 
 ゾロの突然の言葉に、サンジはポカン、と口を開けた。
 なんとも間抜けな表情だが、やがて頬の辺りがじわっと赤くなった。
 それを見て、ゾロの口角はますます吊り上がる。
 
 突然逃げ腰になったサンジの腕を、がしっとゾロの両手が掴んだ。元から拘束などされていなかったその手をぐるぐると頭上で縛り上げてコタツの脚に繋げば、焦ったサンジが目を剥いた。
「あ!?テメ、そいやロープは」
「何を今更。あんな素人結び直ぐ取れる」
 
 だからテメェはひよっこなんだ!
 その時サンジの頭の隅ではゼフの怒声が確かに聞こえた。けれどそんなことゾロが知るわけもなく。
 青ざめたサンジを、ゾロは両手を合わせて拝みたい気分だった。
 いや実際は態度にも声にもでていたのだけれど。
 
「いただきます」
 ニヤ、と笑ったゾロの悪魔の表情に、サンジが声にならない叫びを上げた。
 
 
 
 
 くちゃくちゃと卑猥な水音が狭い部屋に響く。
  
「好きだ」
「あ…・アッ」
 
 ぺろり、シャツを剥いて胸のそこかしこを吸って舐める。
 最初は気色悪いと叫んでばかりだったサンジも、何度も胸の両の粒を転がしている内に大人しくなった。
 
「惚れた。一目惚れして、そんで飯食って更に惚れて、しまいにゃこの腕と強さだ。ますます惚れた」
「ひ…ァ、やだって…」
 
 赤い尖りはふっくらと天を向いている。そしてゾロの唾液でべとべとだ。
 
「てめぇがどういうつもりで俺んとこ来たかは知らねぇが」
「ふ、ぁ…ッ!」
 
 次から次へとゾロの口から漏れる言葉がよほど恥かしいらしい。
 ぎゃーとかうーとかゾロの言葉を聞くまいと散々叫んでいたのに、それも力尽きたのか今や真っ赤に染まったサンジはゾロの手による快感でぐなぐなになって、ろくに言葉も紡げない。
 ヘソの脇に軽く噛み痕をつけながら、ゾロはゆるゆると手を動かす。
 ゾロの手の平に収まったサンジのモノも、既に真っ赤になってベトベトに濡れている。
 ゾロは笑ってそこに口を近づけた。
 
「俺のモンになれ。つーかもう逃がす気はねぇけどな」
「あ……ば、ンなとこで、しゃべ、な・・・ッ」
 先端の割れ目をぬるぬる舌で押し広げながら言えば、目元を染めたサンジが首を振った。
 
「本当はもちっと黙ってるつもりだったんだが」
「あ…ッ…!」
 舌はサンジのモノを下へ辿り、やがて隠された裏の蕾へと行き着く。
 大きく片足だけを広げた姿勢のサンジが、ゾロの息に鳥肌を立ててぶるりと震えた。
 
「つぅか最後の薬、あれは効きすぎじゃねぇのか。俺でさえまだちっと頭の隅がくらくらしやがる」
 耐性のない普通の奴なら危ねぇぞ。
 言いながらきつく閉じた淡い色のそこに口を寄せれば、頭上のサンジが切羽詰った声を上げた。
「ひ、ヤ、そこはヤめ…!!」
 けれどそんな声を聞いてやる馬鹿はいない。
 
 ゾロは脚の間からサンジを見上げると、にまりと笑った。
 
 
「まぁ言わせたのはテメェだからな。責任…とれよ?」
「ああ…ッ!?」
 サンジのはしたない液でびちゃびちゃになっていた手を性器から離し、その狭い穴に潜り込ませた。
 小さな隙間に、2本、3本、容赦なく指を入れてかき回す。
 赤くいっぱいに広がった縁を舌でなぶれば、サンジは鳴き声を上げた。
 
 
「俺は近々組織を抜けるつもりだ。…テメェはどこの組織のモンだか知らねぇが、テメェも連れて行く」
「あ、ァあ…ッ!」
 じゅぷっじゅぷっと音を立てて指を出し入れしながら、ゾロはサンジの顔を覗き込んだ。
 聞いているのかいないのか、辛そうに眉を寄せて喘ぐサンジに、ゾロは唇を落とした。
 
「これは俺の、誕生日プレゼントだって思っていいだろ」
「ふ、ぅ……あ?」
 
 普段のゾロなら言わないだろう、まるで子供が強請るような台詞。
 けれどそこで、ふんにゃりなすがままだったサンジの目に力が戻った。
 
「てめ、たんじょうび…だったの?」
 とろりと開けた口から熱い息を零しながら、青い目がゾロを見上げる。
「おう」
 しっとりと濡れた口元が美味そうで、ゾロはそこにかじりついた。
 舌を差し込めば、ん、と切ない声を出してサンジが眉を寄せる。
 つうっと頬に零れた唾液を舐めてやれば、サンジが余韻の残る甘い声で尋ねた。
「ぁ……いつ…?」
 壁の時計をチラリと見た。時刻は0時を半分ほど回っている。
「…今日、だな。もう」
 
 言った途端、ガチン!と目の前に強烈な星が散った。
「〜〜〜ッ」
「〜〜〜ッ」
 うめいて頭を抱えたのはゾロだけではない。頭突きをかましたサンジも同じダメージを貰ったようで、床に落ちて目を白黒させている。
 けれどサンジはすぐに立ち直ると、ゾロに噛みつかんばかりの勢いで吼えた。
 
「ばっかやろう!ならなんでもっと早くに言わねぇ!!誕生日ならもっと豪華な飯食わせてやったのに!!」
 頭突きのダメージのせいか、じんわり涙を滲ませて、上気させた顔と赤い目元のままゾロに叫んでいる。
 さっきまでの大人しさはどこへやらだ。
 しかも怒っているのは自分が誕生日を言わなかったせいらしい。
 飯は今までにないくらい美味いものを食わせてもらったのに。
 
 それがますます、ゾロの心を鷲掴みにした。
 
 
「じゃあやっぱり食ってよかったんだな」
「……へ?」
「誕生日で一番のご馳走」
 ゾロは入れていた指をずるりと引き抜くと、目の前の白い尻にぐっと手をかけた。
 
「イタダキマス」
「あ?……あ、ぁ、…ッ?!」
 ふなふなに程よく解けた後ろに、ずぶりと規格外のモノを押し込めれば、サンジの背がぴんと仰け反った。
 キツイ締め付け。余所者を排除しようと締まるサンジの動きを押しのけて、ゾロはそのままずずうっと砲身を埋め込んだ。
 
「ひ、ぃ、あぁア…ッ―――!!」
 逃げるサンジの腰を引き寄せて、熱くうねる内部にずぷんと全てを納めきる。
 そしてサンジの甘い鳴き声をリズムに、思い切り突き上げを開始した。
 
 
「ちくしょう、好きだ」
「あ……ぅ…」
「好きだ」
「ふ、ぅ…んッ」
 
 ぐちゃぐちゃずぷずぷと。
 あっちへ返されこっちへ返され。
 そうして全身どろどろのぐちゃぐちゃにされながら、サンジは一晩中ゾロの告白を鳴きながら聞くはめになったのだった。
 

 
 
 
 
 
 
 
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 ゾロ視点だけでえちぃシーンを書くのは初めてな気がします。
 ついついサンジ視点のが書きやすくて、いつの間にか視点入り混じってたりして直すの大変でした。
 そしてこのまま次のページへどうぞ!
 
 07.11.11