罠と毒薬 4
-------------------------------------------------------------------------------

 
「は、ア……ぁ、」
 荒い呼吸を繰り返して、サンジは頭上で繋がれた手を握り締めた。
 ドクドクと後孔から腸内に溢れていたものの勢いは次第に収まり、背中にぴたりと覆い被さる熱いゾロの体の感触だけが残る。
「…ぅ…ッ」
 少しでも身じろぐとくちゃりと生暖かいものがゾロと繋がった部分から滴りそうで、サンジはぎゅうっと後孔に力を込めた。
 床にわずかに付いた爪先がぶるぶると震える。
 
「こいつら、本当にやりやがった!」
 周りの嘲笑。
 しかしサンジは青ざめた顔でそれらに取り合っている暇などなかった。
 先ほどからたぷりと音がしそうな程に張った下腹部が、ぐるぐると嫌な音を立てているのだ。
 腹が痛い。
 急激に冷えた血が足下に下がるような、耐え様もない排泄感が全身を襲う。
 しかしここは倉庫の中。しかも繋がれたままの自分の後ろには、栓をされたようにゾロのモノが入っている状態で。
 トイレに行くことはおろか出してしまうことすら出来やしない。
 緩むはずのない後ろ穴の皺を無意識にぴくぴくと震わせて、サンジは羞恥に耐えた。 
 
「浣腸と同じだからなぁ、出してぇんだろう?」
 サンジの顔色を見て悟ったのだろう、いやらしくスパンダムが口を歪めた。
「……っ」
 サンジの全身に、じわりと脂汗が浮いてくる。
 開きっぱなしの口からは苦しげな息しか漏れてこない。
「いいぜ、ここでブチまけても!」
 ゾロのモノが引き抜かれたらどうなるのか。その結果を想像してサンジは緩く頭を振った。
 今ここで後ろの支えが無くなったら、我慢しきれる自身なんてない。
「その瞬間撮っといてやるよ!」
 口々に笑ってはやし立てながら、中には携帯のカメラを向け始めるものもいる。
 ふ、ふ、と短い呼吸で喘ぎながら、サンジはぎゅっと目を瞑って沸き起こる排泄感にひたすら耐えた。
 背後のゾロは、汗ばんだ手でまんじりともせずサンジの脚を抱えている。
 サンジの後孔に含ませた自身が抜け出ないように、ぴたりと尻に腰を押し付けたままだ。
 
「じゃあロロノア、ショウタイムと行こうじゃねぇの」
 ゆったりと構えたスパンダムが、背後に立つゾロに下す。
「そいつの脚抱えて、こっちによく見えるようにしろよ」
 
 ぐいっとゾロの手がサンジの汗ばんだ太ももを引き上げた。
「ひィ……ッ」
 衝撃に身をすくめるサンジの両足を、ゾロはゆっくりと持ち上げていく。。
 
 
 ナミを助けるためだ、大人しく従うしかない。それはわかっている。
 わかってはいるけれど、この羞恥心は人として容易に捨てきれるものじゃない。
 耐えがたい屈辱に、サンジはガクガクと全身を震わせた。
「…ゾ……ッ」
 やめろ、なんて言えやしない。
 ゆっくりと男たちの目の前で股間を開かれながら、サンジは言葉を飲み込んだ。
 何があってもナミを助けるのだと、覚悟の上で乗りこんだ。確かに相手を舐めてかかっていたこともある。
 けれどゾロが本気で、サンジの何もかもを暴いて、晒していく。
 ゾロとて抗いようもない状況なのだと頭ではわかっているのに、何故か目の端が熱くなるのをサンジは止められなかった。
 
 子供を排泄させるときのように、サンジの膝裏を抱えてゆっくりとゾロが観衆の前に開かせていく。
 ずるりと抜けてしまいそうになるゾロのものを、サンジは震えながらも縋るようにきゅうっと締め付けた。
 
 背後のゾロが、何かを決意するようにゆっくりと息を吸いこんだ。
 サンジを抱きしめるように、耳元に口を寄せる。
 何も言いはしない。
 けれど身近に寄り添う慣れ親しんだ深い呼吸に、その身に纏う気に、ゾロの本気を知った。
 
 ぐっとゾロの指が、サンジの体重を持ち上げて膝裏に食い込む。
「……ッ」
 震えた呼吸をサンジが零した。
 
 その時。
 
 
 
 
 
 
「うおおおおおお――――ッ!!」
 
 
 凄まじいッ咆哮とともにドガンッ!!っと倉庫の扉が内側に吹っ飛んできた。
 
 その巻き添えを食って見張りの一人が一緒に部屋の奥へ転げ飛ばされていく。
「なッ!?」
「なんだ、テメ…ッ」
「誰ッ……」
 次いで周りにいた男たちが声も半ばに次々と沈められていく。
 
「なッ……」
 一瞬の出来事。
 顎を外さんばかりの勢いで振り返ったスパンダムの正面で、乗り込んできた一人の男はふーっと息を吐いて今しがた数人を叩きのめした肩を慣らすようにぐるりと回した。
 制服の黒ズボンの上に、真っ赤なTシャツ。黒い髪の少年は繋がれたゾロとサンジにくりっと大きな目を向けると
「ゾロ!サンジ!ナミ助けたぞ!」
 にかっとこの場の空気を吹き飛ばすような顔で笑った。
 
「……ルフィ」
 やっときやがった、と背後のゾロの呟きに、サンジも苦しさを堪えて小さく息を吐いた。
 




*5へ*

-------------------------------------------------------------------------------

こっから先のサンジの恥ずかしいシーンはやっぱりゾロが独り占めしてほしいと思いまして、ここでルフィ登場です。
この後は…出させます、サンジに。…えへ。

 06.09.21