プレゼント 6
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 手枷と足枷を繋いでいたチェーンを外してやると、クソいてぇ、と呟いてサンジはようやく自由になった両手足にほっと体の力を抜いた。のろりと起き上がって手首をさする。
「……っのクソマリモが、乱暴にしやがって」
 痺れているのか、震える手つきで手首のベルトを外すと、暴れた為かその下にはうっすらピンク色の痣が出来ていた。
 体の柔らかいサンジといえど、長時間偏った体勢を取らされていたのは流石に辛かったのだろう。
「血も出てんじゃねぇかよ……」
 それ以上動く気力もなくその場にへたりと座り込んだまま、チッと舌打ちしてサンジは左手首の傷に唇を寄せた。
 まだ荒い呼吸に、前が全開になったシャツからのぞく、汗ばんだ白い胸が上下する。
 シャツ一枚で気だるげに視線をさ迷わせるサンジは、まだ覚めやらぬ熱を身の内に有したまま、溶けた果実のようななんとも甘い匂いを放っているようだ。
 もっと舐め尽くしてしまいたい。あの汗を、肌を。まだ足りない。
 目の前の男が自分の様子をどういう目で見ているかなど気づくはずもなく、サンジはぺろりと滲む傷口を舐めた。
 ちらりと覗いたその舌先も、誘うように赤く濡れていて。
 ゾロは衝動的にサンジの手首を奪い取っていた。
「てめェ何す……っ!」
 サンジの舐めた唾液の跡をなぞるように、べろりと赤い跡に舌を這わす。
「……ぅ」
 傷が染みたのか、別の衝動か、眉をしかめたサンジがぴくりと肩を揺らして赤い顔でゾロを睨んだ。
「……放せよ。まだやる気かよ」
 手首を振り払おうとすると、逆にゾロが全身を抱き込んでくる。
「なんで。まだやってねぇダロ」
「さっきあんだけ散々したじゃねぇか!」
 この変態!と喚くサンジの逃げる腰を捕まえて、ゾロは不満げに言い放つ。
「散々イッたのはお前一人だろ。俺はまだ一回だ。しかもあんな入り口で……」
「恥かしい事真顔で言ってんじゃねぇッ!!」
 途端に振り下ろされたサンジの蹴りをひょいと避け、そのまま足首を捕まえるとゾロは真っ赤になって今にも泣き出しそうにも見えるその耳元に口を寄せて囁く。
「もっと奥に入れてぇ」
 耳たぶを甘噛みすると、ぶるっとサンジの背筋が震えた。
「……っ」
 舌を甘噛みし、申し訳程度の顎鬚をちゅっと吸う。そのまま首筋に唇を這わせてゆく。
 サンジのシャツの下に入れられたゾロの手が、汗ばんだ背をなぞる。そのままつぅ、と最奥まで指を滑らした途端、
「ぁっ」
 窪みを探りかけたゾロの指に小さく声を上げて、気づいたようにサンジがゾロを突き飛ばした。
「や、やっぱダメだ!今はダメ!俺ァシャワー浴びる!」
「あぁ?」
「何かべたべたして気持ち悪ィしよ、その後でもいいだろが」
 ばっとゾロの手を離すと、サンジは動かない体を無理やり動かしてゾロから距離を取ろうともそもそベッドを這い出した。
 いつもならあのまま流されてしまうだろうに、急なサンジの慌てぶりにゾロの片眉がぴくりと上がった。言ったのは、ほぼ直感だ。
「……てめぇ、まだ何か隠してんな」
 低いゾロの言葉に、サンジの体が見るからに強張った。
「ッ、なんだとテメェ、妙な言いがかりつけてっとオロすぞ!?」
 憤慨した口調と共に自分を振り返って睨む瞳。じっと覗き込むゾロは、奥に小さな揺れを感じ取って、確信に口を歪めた。
「あァそうかよ」
 低く笑って、サンジに近づく。ぎしりとベッドがたわむ。
「テメ、……」
 四の五の言いだして騒ぎ出す前に、ゾロはベッドを這っていたサンジの腰を捕まえるとぐいと自分の元に引き寄せた。
 ゾロの両足の間、サンジから見れば背後から抱きしめられている姿勢。
「んだよ、離せクソっ……!!」
 胸の中で暴れるサンジの白い肩口に、半ば噛み付くように口付ける。
 背にあたる熱に、びくりとサンジが大人しくなった。
「そんなに言いたくねぇなら……言わせてやる」
 にやりと笑うゾロの不穏な気配に、サンジが振り返る間もなかった。




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