KOAKUMAラヴァー 4
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(4)



* * * * *

 
 ぽかぽかとした日差しが窓越しに暖かい。
 朝練を終えたばかりの1時間目の授業、しかも場所は窓際と来ればそれはもう寝て過ごすしかない。
 そんなゾロだが、今日は違った。
 ガヤガヤと騒がしい声のする校庭を、じっと見下ろしている。

『なんだゾロ、誰か気になる子でもいんのか』
 珍しいその様子に後ろの席にいる友人のウソップが、ゾロの背中を突付いて小声で話かけてきた。
 どの子だ?とからかうように自分も窓の外を覗き、けれど首を捻った。
『なんだよ、女子いねぇじゃん』
 校庭では同じ学年のクラス2つが合同体育の授業中だった。けれど女子は別メニューで体育館に行っているらしく、日差しの中で走らされているのは男ばかり。

「……」
 別に女子を眺めていたわけじゃない。ゾロが今用があるのは、この学校の男だけだ。
 でもそれを説明するのも面倒だと思ったとき、そうか、とひらめいた。
『おいウソップ、後でちょっと頼みが…』
「じゃべってんじゃねぇぞそこ!」
 ウソップを振り返ろうとしたら、右斜め前の教卓から女とは思えない教師の怒声と共に、ビュッと風を切って何かが飛んできた。
 思わず反射的に顔を逸らせて避ければ、チョークだ。未だにチョーク投げてくる教師がいるなんてお前の学校いつの時代だよと、交流試合をした相手には言われるが、この学校では割りとどの教師も投げる。
 ついでによく投げられる身としては避け方も上手くなるわけで。
 ウソップも咄嗟に顔を伏せたため、勢いもそのままにチョークは窓と窓の間に壁にぶつかって跳ね返り、中央席付近の男の頭にパチンとぶつかった。
「った」
 小さく声を上げたのは、よく見れば昨日部室付近でぶつかったあの男だった。
 ぼさっとした金髪に手を伸ばし、白に塗れたあたりをぱたぱたと払う。

「悪いなサンジ。文句はあいつ等に言え」
 くすくすとクラスメイトから笑い声が上がる。サンジの頭から更に転がったチョークが机を汚した他の生徒から「俺までヒデェよベルメール先生!」と文句が上がった。
 サンジと呼ばれたその男はゾロとウソップの方を振り返る事も、文句を言うこともなく、ただ恥ずかしそうに俯いた。


 * * *


 あれから幾度もの同じ夢で、ゾロは快感に流されながらもじっと相手の男を観察した。
 口元が見えたのは昼間のあの一度きりで、以来は同じように首から上は霞んで見えない状態だ。
 けれど、あの時あの一瞬、顎の下に見えたのだ。
 小さなホクロが。
 
(やっぱり…)
 ギシギシと揺れる体、熱い息を吐きながら、ゾロは小さく唇を舐めた。
 相変わらず主導権など一切ない行為だったが、自分のいい所に当たると酷く感じるのか、目の前の男は時折小さく仰け反る時がある。
 鎖骨へと滑る汗。それを舐めたいとすら最近は思うようになってきてしまった…いやそこじゃない。
 ゾロは小さく頭を振った。
 露になる喉仏。
 その顎の付け根にチラリと見えたのは、やはり同じ場所にあるホクロだ。

 ぎゅっと中心を搾りとられるような快感に歯を噛み締めながら、ゾロは男を睨みつけた。

(お前が一体誰なのか…絶対見つけてやるからな)

 一体自分の体に何をしているのか。
 左腕の怪我はどうして痛まなくなるのか。

 いやそれよりも、何よりも。

(好き勝手やられっ放しってのは、絶対許さねぇ…!)

 マウントポジションで勝手に腰を振るこの男を押し倒し、泣いて許しを請うまで突き上げてやるからな…!
 動かない拳を握り締めながらぐるぐると獣のように唸るゾロの上で、『ごちそうさま〜v』と男ののん気な声が聞こえた。
 最近慣れてきたせいか、男は随分緩んだ声をあげるようになった。完全に舐められている。それが益々腹立たしい。
(今に見てろ、畜生…!!)





*5へ*



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2012/11/15