KOAKUMAラヴァー 5
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(5)



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 昼休み、メモを片手にガラリと知らないクラスの教室のドアを開けたゾロに飛んでくる視線は様々だ。
 ゾロ自身は今2年だが、学年が上でも下でも大抵の女子からは興味津々の目で見つめられる。
 だが堂々とした姿勢と元々の強面のせいで、初対面の男からは怖がられるか逆に睨み返されるかのどちらかが多い。
 さて誰に聞こうかとクラスを見回したところで、見知った顔がこちらに気づいて手を振った。
 
「どうしたんですかロロノア先輩」
「おぅ」
 折り目正しい明るい口調でドアまでやってきたのは、同じ剣道部の後輩のコビーだった。知り合いが居て、今日のクラスはラッキーだ。
「コビー丁度よかった。なぁヘルメッポってどいつだ」
「え?ああ、あそこの…」
 コビーが指差した先に目をやれば、金髪をきっちり前分けにした男と目が合った。
 まさか自分が名指しされるとは思わなかったのか、男がビックリした様子でガタンと席を揺らした。

「ななな何か用でしょうかっ…」
 教室を突っ切って目の前に立ったゾロに、ヘルメッポが背筋を正してその場に起立する。
 傍から見たら完全にカツアゲ状態だ。
「いや、ちょっと確認したい事があってな」
 他の生徒は何事かと、ゾロとヘルメッポを取り巻いて固唾を飲んでいる。
 ゾロはじろりとヘルメッポの全体を眺めると、その左肩に手を置き、もう片方の手で顎をグイと持ち上げた。
 ゾロから見て右側、つまりヘルメッポ自体の顔を右に背けるようにその左側の首筋を確認する。

「…ねぇな」
 ゾロは溜息をつくと、ヘルメッポから手を離した。
「悪い、人違いだ。邪魔したな」
 軽く手を上げて再び教室を出て行ったゾロの後ろで、へなへなとヘルメッポが椅子に崩れ落ちた。


 * * *


「こいつも違う…と」
 廊下に出て、メモに書いてある名前を一人消す。
 リストにある名前はあと20人程だ。

 あれから、ゾロはウソップに頼んで校内にいる金髪の男を洗い出してもらった。
 新聞部に所属するウソップは、持ち前の性格もあってか校内の人物や情報に人一倍詳しい。
 だが最初、「金髪で顎髭のある男」と条件を出したら、該当する人物は誰一人としていなかった。
 考えてみれば、そもそもこの高校で髭を生やす事自体、校則に厳しいここの熱血教師達が許すはずもなかった。

「なんだゾロ、人探しだなんて珍しいな。どうしたんだよ」
 がっかりしたゾロに、ウソップの方が逆にびっくりしたようだった。
「いやちょっと…落とし前をつけたい相手がいてな」
 呟けば、ウソップは何故か怯えた表情で身を抱えた。
「おおおお前大事な時期なんだから暴力沙汰はやめろよ!そんな理由なら協力しねぇぞ!?」
「あ?別に殴るわけじゃねぇよ。ちょっと…聞きてぇ事があるだけだ」
「ほんとかよ…?」
 胡乱な目をしたウソップだが、ふと思いついたようにゾロを見た。
「もしかして、そいつ付け髭って可能性もあるんじゃないか?」
「付け髭?」
「だってわざわざ顔を隠してたんだろ?髭なんて特徴的なもの、あえて見せるはずないぜ。むしろ印象を付けさせる為のフェイクって可能性が高いな」
「なるほど」
「髪の毛は、黒や茶はともかく金髪ってのは簡単には染められる色じゃないから、本物だろうな」
「お前凄いな」
「ふふん」
 ウソップは高い鼻を反らせて自慢げに擦った。
「じゃあ金髪って路線で探すか…ゾロ、金って言ってもどんな金色だ?」
「あ?」
「一口に金髪って言っても、明るいのからくすんだの、銀色に近いのまで様々だろ」
 なるほど、とゾロは腕を組んだ。
 そこまで考えていなかったので、これはウソップに聞いて正解だった。
「あー…そうだな、明るくて、蜂蜜みたいな色だったな」
「ふんふん、了解」
 これで結構絞り込めそうだな、とウソップが手帳に何やら書き込んでいく。

「ゾロ、金髪以外で覚えてる事はないのか?まぁ会えば体格とかでわかるか?」
「ああ…そうだな」

 ホクロだ。
 顎の下、左の首の付け根部分にある小さな小さなホクロ。
 見上げた時に見えるあれは、自分でもそうそう意識して見た事がないだろう。

 ゾロは小さくニヤリと笑った。
 それを隣で見ていたウソップが、何故か再び怯えた顔をした。





*6へ*



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2012/11/19