地下部屋倶楽部 第2夜
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*ちょっぴり注意…今回はえーとあの、道具じゃなくて、生物との絡みになっております。苦手な方はバックぷりーず!*
 
 
 
「地下部屋倶楽部にようこそ、紳士・淑女の皆さま」
 
 真っ暗な部屋に不意にスポットライトがあたり、一人のタキシード姿の男が現れた。素顔を仮面に隠した背の低い男だ。
「遠路はるばるお来し頂きまして、誠にありがとうございます。今宵も皆様のご期待に添えるよう新たな商品をご用意いたしました。試用いたしますのは、昨晩と同じ青年でございます」
 男の言葉に、ステージの奥のほうにライトが当たる。白く浮かび上がったそこには、金髪碧眼の青年が全裸で柱に繋がれていた。
 床に腰を付け、両手を頭上にまとめて括られている。両足も大きくMの字に広げさせられていて、膝裏を括ったロープが更に青年の頭上から吊り下げられていた。
 ただ昨晩と違うのは青年の口にギャグボールが嵌まっていることと、青い目が正気を保った光をもって、突然照らされた灯りを忌々しげに睨んでいることだ。
「それでは本日の商品でございます」
 男の口元がにやりと吊り上り、饗宴の開始を告げた。
 
 
 ステージの両端から仮面と黒皮のビキニパンツのみをつけた筋肉逞しい男が現れた。左手の男は大小の注射器のようなものと濁った色の液体が入った大きな瓶を掲げており、右手の男は台車を押している。
 台車の上には1メートル以上はある大きな水槽が乗っていて、中には透明の水がなみなみと入っていた。
 観客の見守る中、左手の男が手にしていた瓶から液体を少量手に取った。その手を置かれた水槽の上空あたりで、何かをおびき出すかのようにゆっくりとさ迷わせる。
 と、水槽の水がブルブルと揺れ出した。ぐねぐねとその波は大きくなり、やがてザバリと大きな波が水槽を飛び出し、どろりと床に溢れた。
 重量に耐え切れずに傾いた水槽が、大きな音を立ててステージに転がる。
「俗に言うスライム。当社が品質を改良いたしました生命体でございます」
 
 そう、水槽に入っていたのは水ではなかった。ぶるぶると身悶えたそれは男の手の平についた液体に向かってその身を伸ばすと、探るように表面を這いまわりだした。
 透明なゼリー状の体がにわかに青白く濁ったように発行すると、男の手の平に付いていた液体がみるみるなくなっていく。
「ちなみにこれはスライムの好物の餌でして、主成分は穀物なので人体には無害です」
 司会者が説明している間にスライムはその餌を舐め終えたらしく、ぬとりぬとりと緩慢な動作でステージの上をさ迷い始めた。
「スライムについて少々説明をいたしましょう。これは付属の餌と水だけを糧に、長ければ数年以上生きる生命体でございます。成長するにつれ体積も増えていきまして、これで丁度1年くらいでしょうか。暗く湿った場所を好み、肉食ではありませんので人を襲うことは決してありません」
 ステージの上をどろどろと動く様はグロテスクでもあるが、濁りのない透明な液体は水のように綺麗でもある。
「もっとも体内の構成要素の90%以上は水分ですので、生物というよりは植物と言ってよいかもしれません。体の表面から分泌される液も、成分上ほぼ水に近いものです。反応するのはこの餌の「匂い」だけで、意志というものはございません。」
 そこで男は言葉を切ると背後に控える男達に軽く合図をした。
 一人は空になった水槽と台車を持ってステージの袖に消え、もう一人が大小サイズの違う注射器の中に瓶からなみなみと液状の餌を吸い上げて満たし、客席に掲げて見せた。
 注射器といっても先端は針などではなく、先端に液を吸い上げる穴の開いた太めのプラスチックの素材である。
「使用方法は様々考えられるかと思いますが、注目すべきはこの生物が……暖かくて湿った場所が大好きだということでございます」
 注射器を手にしていた男が、壁に吊るされていた青年の元に向かった。
 青年は身を固くして近づいてきた男を睨みつけるが、自由を全て奪われているのでは何の威力もない。
 青年の前で膝をついた男は、その大きく開かれた脚の間にある淡い色をした窄まりに太い方の注射器の先端をあてがった。
「…ッ!」
 青年の青い目が見開かれ、抵抗を表すように柱に括りつけられた腕がバタバタと揺れる。しかしそれはそれ以上大きな動きにはならず、先端がぐっとアナルに突き立てられた。
「……んぐッ」
 言葉を封じられた青年の口からうめき声が漏れる。男はかまわず注射器のピストンをぐっと押し込めた。
 青年が驚いたように一度大きく体を震わせる。
 男が手にした注射器の中に満ちていた濁った液体が、少しずつ少しずつ、空っぽになっていく。
 液体を中に注ぎこまれている青年の体がぶるぶると震え、表情が次第に苦しげに歪んでいく。
 やがて中身が空になってしまうと男は注射器を引き抜いた。
「……っ!」
 青年のアナルがひくりと蠢き、閉じきれなかった隙間からどろりと零れた液体が床を濡らした。
 
 男は空になった器具を床に放ると、次に青年のうなだれたままのペニスに手をかけ両の指でその先端の粘膜を押し開いた。
「ん、ぐ…ッ!」
 痛みによるものか、青年が小さく声を上げた。ピンク色の尿道の粘膜が男の指の間からちらりと覗く。
 男は手にしていた小さい方の注射器の先端を、その小さな穴にぐっと突き入れた。
「ふぅんッ…!」
 青年が嫌々をするように首を振る。
 同じくピストンが押され、細い方のシリンダの中身もゆっくり青年の中に注入されていく。
 青年の体が目に見えてガクガク震えた。
 男は片手で注射器を突き入れながら、もう片方の手で器用に青年の竿をしごき、器具の埋め込まれた鈴口のあたりをぬるぬると擦り上げていた。
 異物を尿道内に入れられながらも刺激を与えられた性器はゆるゆると立ち上がり、青年の頬から目元のあたりはいつのまにか朱に染まっている。荒い呼吸に、白くて薄い胸が上下していた。
 やがて中身を全て青年の中に注ぎ入れて、空になった注射器を男は引き抜いた。
 抜く時につられて先端の穴から溢れた液体が、半ば立ち上がった青年の性器を伝う。
 
「さてここまでくれば、皆様にはもうお分かりですね」
 司会者の言葉に会場が息を呑んだ。
 空の器具を手にマスクの男が立ち上がると、その後にはいつのまに忍び寄っていたのかスライムの姿があった。
 おそらく餌の匂いに引かれてきたのであろう、床に転がった器具から零れた餌の残滓をその体全体で舐めとっている。
 その姿を見た青年の目が、まさかと言うように見開かれた。
 スライムが透明な体を波打たせて体の上部を細く伸ばすと、まるで匂いを嗅いでいるかのように空中をさ迷った。
 そしてひた、と青年の方を向いて動きを止めると、伸ばしていた部分を元の波打つ胴体部分にたぷんと合体させて、ずるずると柱に括られた青年の方に近づいてくる。
「……ッ!」
 ぶるぶると震えるスライムの体が、青年の開かれた股間に近づいた。
 後ずさろうとしたのか、広げられた白い腿の腱が浮き、ロープがぎしぎし揺れた。
 怯えたようにきゅうと青年のアナルの襞が締まり、もう一筋中から溢れた液が伝う。
 スライムはしばらく床に零れていた液体を舐めているようだった。
 しかしそれを全て吸い上げてしまうと、そのまま犬のように透明な体を蠢かせてあたりの匂いを嗅ぐように首をめぐらせ……やがてご馳走の隠された場所に気づいたらしい。
 透明な触手のように体の1部がぐぐっと伸びて青年の白い尻、窄められたアナルにぴたりと吸い付いた。
「……――ッ!」
 くぐもった悲鳴が青年の口から漏れた。
 スライムはその身をぐねぐねと揺らして、硬い青年の後孔をこじ開けようと動いている。
 冷たくヌルついた感触に、青年の肌が粟立った。
 外部からの強い圧迫に、それほど長い時間耐えられるはずもない。青年の抵抗も空しく、アナルの隙間から無理やりスライムが体をねじ込んだ。
「ふぅッ―――!!」
 青年の体がビクビクッと跳ねる。
 ついに口を開けた体内から先ほど注ぎ込まれた餌が垂れ流れ、それに引き込まれるように次々にゼリー状の生物がその身を狭い粘膜に潜り込ませていく。
「…ふぐッ!……んぅ――ッ!」
 ぐちゅぐちゅと音をさせながら青年のアナルにスライムが押し寄せている。1片が餌を食べて出てくるとそれを押しのけるように別の1片が入り込み、1つの固体なのにまるでいくつもの意志を持った手であるかのように出入りを繰り返す。
 青年を吊り下げたロープが激しさを表すようにぎしぎしと揺れている。
 アナルがぎりぎりまで押し広げられてぬるぬるとしたものが直腸にどんどん入り込み、青年は恐怖に目を見開いた。
 容赦ない蹂躙に吊り下げられた両足がぶるぶると震え、何かに耐えるようにつま先がピンと張る。
 青年の体が揺れる度に、下半身を覆うように張り付いたスライムがぶるぶると震えた。
 
「みなさま、よくご覧いただけておりますでしょうか?」
 司会者がうっそりと笑う。
 スライムは餌を吸収する瞬間淡く発光するものの、それ以外はほぼ透明に近い。
 その体を通して、いまや蹂躙される青年の体内の様子は観衆の目に晒されていた。
 ゆらゆらとした水面のように波打つスライムの体の動きのせいで多少の難はあるものの、アナルが堪えきれずに広げられ液体を零す様も、ぎりぎりまで口を開けさせられた粘膜も、その真っ赤に熟れた中の様子でさえ全てが丸見えになっている。
 肛門の中に溢れる餌を嬉々として漁るスライムは、こびりついた全てを舐め取るべく腸内の壁を隙間なく這いまわっている。
「ん、ぅう…ッ!」
 吊るされた青年の脚が、時折何かを感じたのかピクッと痙攣する。
 白い肌が踊るその様子に、誰しもが食い入るように見入っていた。
 
 
 やがて青年の中に入り込めなかったスライムの後方部分の体が、ゆったりと持ち上がった。何かを探すように、ゆるりと青年の腹を上る。
 そしてそこに蜜を溢れさせて半ば立ち上がっていた性器を発見すると、嬉々としてまとわりついた。
 とぷりとしたスライムの体が、じわじわと性器を覆って行く。
 溢れる餌に、まるで歓喜しているかのようにポウっと透明な体内が輝いた。
「ふ…ぅ、ぅう――ッ!」
 青年の青い目が見開かれた。
 スライムが性器の先端の、尿道の中に潜り込んだのである。
 入り込んだスライムは首を振りたてるように狭い粘膜を押し広げて進む。
 アナルと同じように後から後から餌を求めた新たなスライムの触手が伸び、我先にときつい内部に潜り込んで粘膜を漁る。
「…ッふ、ん、んぅんッ!」
 おそらく何者にも犯されたことがないであろうその器官をくじられる感触に、青年は喉を引きつらせ身を捩って暴れる。しかしまとわりついたゼリー状の生物はその身をゆらゆらとさせるだけだ。
 透明に揺れるスライムの体内越しに、ぱくりと口を開けさせられた赤い尿道の粘膜が見えた。
 
 
「餌で誘導してしまえば、再び別の場所に誘導するまではこうして暖かな粘膜に居座ることも多いのですが」
 司会者の言葉に視線を戻せば、後孔を出入りしていた方はすっかり餌を食べ尽くしてしまったらしく、先ほどのような激しい動きはしていなかった。
 しかしそこから移動する様子もなく、半分は性器の方へ触手を伸ばそうとしているものの、以外は青年のアナルを広げたままその身を床に横たえている。
 
 司会者はそこで、舞台の袖から新たに持ってこさせたスライムを手にとって見せた。
 マスクの男が差し出したそれは、今青年の体に巻きついていものよりもずっと小さい。
 ゆらゆらと男の手の上で蠢くそれの1部分を掴むと、司会者はそこにビニールの袋を被せた。
 もう片方の手で、懐から折りたたみ式のナイフを取り出す。
「至急引き剥がしたい場合…例えば予想以上に奥に入ってしまい取れない場合や…」
 チキッと刃を出して、そこで男はいやらしい笑いを浮かべた。
「……それから聞き分けのない奴隷には、こう使うと良いでしょう」
 司会者の白い手袋をはめた手が、ビニールを被せた根元のあたりをぶつりと切ってみせた。
 さほどの手ごたえもなく切れたその断面はゼリーのように滑らかで、一瞬平らになった切り口はすぐに他のどろどろした部分に紛れてわからなくなり、男の手の上にいたスライムも何事もなかったようにそのまま体を揺らしている。
 しかし切り取られ、司会者の握るビニールの中に残された方は様子が違った。
 切られた途端、びゅるるっと激しい動きで痙攣し始めたのである。
 ゼリー状の体が右へ左へと小さな袋を飛び出さんばかりに暴れ、ビニールのあちこちを押し上げてのたうち回る。
 小さな袋は内部から四方を棒でつつかれているようにパンパンに脹れて。
 そしてまるで苦悶の最後を遂げるように、スライムの体はびしゃっと飛び散ってどろどろと崩れ落ちた。
 
 司会者はビニールをマスクの男に渡すと、ナイフを手にしたままスライムに内部を蹂躙されている青年に近づいた。
 ペニスを嬲られ身動きも取れずただ体を震わせていた青年は、男の存在に気をやる余裕もない。
 男はまるで張型のように青年のアナルを広げたまま動きを止めているスライムに手を伸ばすと、アナルに入り込んだ部分を切り落とすようにその付け根部分にサクリと刃を入れた。
 
「ふぐぅッ!んん――――――ッ!!?」
 ビクビクっと青年の体が跳ねた。
 青年の内部に取り残された形に切り取られたスライムの体が、バイブのように激しく動き出したからだ。
 青い目が大きく見開かれ、吊られた手足がガクガクと揺さぶられる。
 余すところなく咥え込まされていたスライムがさらに容積を増して直腸内で大暴れしているのだ。
 柔らかく充血した粘膜を、そして前立腺を容赦なく叩きえぐられて、青年が声にならない叫びを上げてその身を捩る。
 青年のアナルからはみ出したスライムの切れ端が、びるびるッとまるで打ち上げられた魚の尾のように激しく痙攣していて、内部の激しさを表していた。
「ふぅッ、うぐッ、ん、んんん――――ッ!!」
 滅茶苦茶に性感を刺激されているのだろう、青年の体が大きく痙攣したように動きを止めた。
 背が反り白い喉が晒される。
 絶頂を極めたのだ。
 しかし尿道はスライムによってみっちり塞がれていて、精液を吹き上げることはできない。
「―――ッ!」
 悶絶した青年のアナルから、こぷりと溶け落ちたスライムの残骸が床に流れた。
 
 
 
 
 暗い部屋。
 底辺の空気にじっとりと澱む、さび付いた血の匂い。
 それに眉一つしかめず豪奢な椅子に腰掛けた壮年の男は、モニターから目を離すと目の前に立つ剣士に向き直った。
「いやまったく彼は素晴らしい」
 その言葉に、わずかであるが剣士の殺気が膨れ上がる。
 それに気づいたのか、男はゆったりとした口調でごつごつと飾りのついた太い指を組んだ。
「『生身の人間』とは交合させていないだろう?」
 返事の代わりに、暗闇でもよく光る獰猛な目をした男の手が、机の上から写真を剥ぎ取った。
 そしてそのままきびすを返し、ボディガードが両脇に立つ重い扉を真っ直ぐに出ていく。
 
 
「……まったく、素晴らしい」
 
 その賛辞は誰に向けたものであるのか。
 狂ったような男の笑いが、剣士の消えた闇にこだました。
 
 
 全てが終わるまで、あと四夜―――。





*第3夜へ*



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えーと、スライムでした…。他にコメントのしようもなく。

 05.10.22