再会
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まさかこんなすぐに一方的な再会を果たすなんて思ってもみてなかったさ。
予感、みたいなのはあったけどまさか、なぁ?
別れて1週間と立たないうちにいわば追うものと追われるもの?な関係になっちまう
なんてな。
本当に世の中には冗談みたいなことがよくおきる。
それはその中でも飛び切りだ。
 
賞金稼ぎというのはその名のとおり賞金を稼いで生活をするやつらのことを指す。賞
金とは俺らの場合はお尋ね者、もっと厳密にいってしまえば今のところは海賊メイン
だ。
アニキと慕ってついていったのが海賊狩りメインでやってたからってのもあるんだ
が、まぁ、そこらへんはどうでもいい事情だ。問題は賞金首をとらないと俺らはこの
まま餓死する運命にあるってことだ。
……こんな職種を選んじまったからにはもっとうに畳の上で死ぬことなんて当の昔に
放棄はしているけれど、海賊と切り結んでばっさり…ならともかく(いや、本音を言え
ば大往生、畳の上で孫やなんかに見守られてってのはすげ―希望ではあるけれど!
!)餓死だけは情けないので回避したい。
そんなわけで新しい手配書を取りにいって道々金額はちょぼちょぼでもあっさり片の
つきそうなのを何件かピックアップしていたところ、あの笑顔に出会った。
 
「お、おい。」
「な、なぁこれって…」
 
「「ルフィのアニキじゃねぇか!!」」
 
思わず俺らは他の紙が地面に散らばるのもかまわずその手配書を顔に近づけ二人同時
に絶叫していた。
 
 
大まかな事情は省くことながら俺らはちょっと前まである海賊団と行動をともにして
いた。その海賊団て言うのがいわゆる海賊らしくない海賊で、海賊旗こそたってはい
るもののその乗組員達の見た目からは想像もつかなかった。
まぁ、物騒な連中ではあるかもしれないけれど本当に見た目がらしくない。しかも、
なんとうち一人は俺らの兄貴分でもある海賊狩りをしていた人で、残りは美人だけど
油断してたらとんでもない目にあわせてくれる、でも気持ちいい美人だったりやたら
にうまいメシを作れるコックだったり、鼻が異様に長い狙撃手だった。
そうして一番の変わり者はなんといってもその船の船長だ。ぼろぼろの麦藁帽子をか
ぶり無邪気に自分の信じたものだけを信じていく人物。
そこには善とか悪とかではなくただ単に自分の好き嫌いだけできめる子供みたいな、
というよりも子供の理屈しかなかった。
子供だということは時折、大人であることよりも強い。愚直に信じ込めば何でもかな
うと思っているからかそれとも大人の考えとやらに入っている打算というものがかけ
落ちているせいか。
信念とかいうやつの強さは思いの強さで決まるとすれば、その船長は誰よりも強い信
念を持っていた。
あぁ、この人にはかなわねぇ、と年下なのに、年下なはずなのにそう思わせてもらえ
るほどに。
海で年齢は関係ない。
けれど見るからに子供なその人には多分絶対かなわない、と思ってしまうのはその人
の信念の強さを間近で見させてもらったせいだろう。
 
「麦わらのルフィ、ねぇ…。」
 
改めて手配書を見る。
曇りのない笑顔で満面の笑みで写っているそれはどうみたって手配書に使われるよう
な写真ではなく、天真爛漫と表されるような、笑み。
ただ俺達はこの人がこの笑みほど子供でもないことも、悩みがないわけでないことも
なんとなく、知っている。
それでもそれをなんでもないことのようにして笑うのだ。
この人は。この人たちは。
 
「元気かねぇ。」
 
どちらともなく声に出した疑問をその次の瞬間俺達は笑い飛ばしていた。
そんなことあるわけないのだ。
あの人たちが元気でいないことなど、ない。
それは根拠のない思い込みではあっても、限りなく事実に近い事象だ。
 
「乗ったんだな、グランドライン。」
 
「どんなところにいってもあの人たちはあの人たちだろうなぁ。」
 
少しして我に返ったように言ってどちらともなくその手配書を折り、懐に入れた。飯
の種にする気なんてもちろんさらさらない。かといって何かのお守り代わりというわ
けでもない。
ありたいていに言えば…なんとなく、だ。
感傷で少し湿っぽくなりかけた空気を吹き飛ばすように気合を入れなおす。
「とりあえず!」
「おう!」
「今は何より俺達の明日の飯の種探しだ!」
「だな!」
 
あの人たちと同じように自分達も今をこうしてここで生きているのだから次に笑って
また話せるように、まずは今日を精一杯生きること。
「これなんてどうだ?」
「こっちでもいいんじゃねぇか?」
あの人たちに比べればささやかな生活かもしれないけれど、それでも俺らもがんばっ
てる。





*END*