11月9日(金)
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 朝の光りがカーテン越しに目を射して、ゾロは瞼を持ち上げた。
 
 昨日一日中降り続いていた雨はどうやら上がったようだ。
 薄っすらと明るい部屋の中で、ゾロはのっそりと上体を起こした。
 まだ少しだるさは残るものの、自分のものではないようだった体の感覚は今日ははっきり戻ってきている。
 
 意識をなくす程熱に浮かされたなんて、ガキの頃以来じゃないだろうか。
 もし自分の首を取りたい連中がいたなら、今回はさぞ好機だったに違いない。
 本能的に闘うことはできても、いつものように鋭い剣を振るえた自信はない。
 
 失態に舌打ちして、ゾロは空腹を覚えた腹をさすり――その手を止めた。
 
 
「……」
 見下ろせば、胸から腹に巻きなおされた白い包帯。
 血の滲んでいたガーゼも全て取り替えられて、真新しい薬の匂いがした。
 
 昨晩夢うつつに交わした言葉を思い出す。
 
 
 ふと視界の端に映ったものを見れば、コタツテーブルの上に一人分の鍋と食器があった。
 鍋の蓋を開ければ、白い粥。
 蓋の裏についた水滴が、数時間前までの暖かさを物語る。
 
 
 ――やはり昨日のあれは。
 
 
 伏せてあった茶碗は、持って帰るのも面倒だとゾロの部屋に置きっぱなしになっているサンジの持ち物だ。
 ゾロは添えてあったレンゲを取ると、柔らかい鍋の中身をすくった。
 
 ほんのり口の中に広がる、出汁と卵の味。
 
 
 冷めてもやはり美味いそれを、ゾロは静かな部屋でひとり、黙々と口に運んだ。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
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 背中を丸めて、ひとり。やけに静かに感じる朝。
 
 07.11.09