11月8日(木)
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 ひや、とゾロの額に冷たい感触が落ちた。
 
 
「……てめぇは、馬鹿だなぁ」
 
 
 頭上から呆れた溜息。
 小さく空気を揺らすように落とされたそれは、けれどとても甘さを含んでいる。
 瞼は重く、視界は暗いまま。体も泥のように動かない。
 
 ふっと頬に何かが触れた。
 肌の表面をわずか触れるように、なぞっていく。
 ほんのり冷たい。
 
 指先、だろうか。
 
 
「……馬鹿だなぁ」
 
 もう一度声が漏らされる。
 全身が熱い。けれどそれとは別に、心の奥の方が妙に暖かくなった。
 何故だろう。
 
 
 俺のことを馬鹿だと言っていいのは俺だけだぞ。
 
 
 それでも少し悔しくてそう言えば、ふわりと笑う気配がした。
 
 
 
「……俺だって、馬鹿だ」
 
 
 少し泣きそうな声に聞こえたのは気のせいだったろうか。
 
 
 聞きたかったけれど、ゾロの意識はそこで再び途切れた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 07.11.08