おつまみ屋 前編 |
夜の繁華街。週末ともなれば仕事帰りのサラリーマンと学生で雑多に溢れ、陽気な笑い声と喧騒が熱く渦をまく。 3月も過ぎれば風も暖かく、どこか緩んだ顔をした人間が多いのはそのせいかもしれない。 ゾロは羽織っていたコートの中に手を差し込むとネクタイを緩めた。 「お、ゾロちゃん何?本気モードってやつ?」 ちょっと小用に…とやおら細い路地に消えていった上司がひひひ、と笑いながら戻ってきた。 摺り寄せてきたその髭面をさり気無く押しのけ、ゾロは小さく息を吐く。仮にも上司に向かって無礼な態度かもしれないが、そんな些細な事を気にする性格と付き合いではないのはお互い様だ。 「違いますよ。熱いだけです」 土曜日が出勤で潰れることもゾロの勤める会社では珍しいことではなく、会社帰りにこうして上司であるシャンクスに飲み屋街に連れ出されては、朝まで付き合わされるのも毎度のことだった。 もっとも独り身で帰ったところで誰が待っているわけでもない。ゾロとしても酒と飯がほぼタダ同然でありつけるので、願ったりなのだが。 元来の強面につけてあまり愛想も良くない為に社内では少し距離を置かれていたりするゾロだが、酒が飲めることもあってかこの上司には新人時代から非常に気に入られていた。 そして今日も飲み屋の梯子2軒目。始まりが早かったのでまだ時計は9時を回ったばかりだが、まだまだ夜は長い。 「今日はお前にいい店紹介してやろう〜」 にま、と上司が笑った。 ゾロの肩を組んで、少し潜めるように言う。その笑い方に、ああ、次行くのはそういう店なのかと悟った。 いわゆるソープとか、そんな呼び方をされる店だ。 シャンクスはこの界隈の店を知り尽くしており、馴染みの店も沢山ある。 中にはそういった店だってあるわけで、ゾロも何度か連れて行ってもらったことがあった。 しかしこの店はこの子がオススメだよ、なんて言われても、ゾロとしては酒さえ飲めればあとはどうでもいいのでよくは覚えていない。特定の恋人もいないのでそりゃあそういう店の世話になるのに抵抗はないが、ゾロとしては一晩中飲んでいられる店の方が好みだった。 隣にいるのが綺麗な女だろうとオカマだろうと、とりあえず酒が美味ければそれでいい。何より楽だ。そんなゾロの趣向を知ってか、最近ではそういう店に連れていかれることも無くなっていたのだが。 シャンクスのことだ、また面白いお気に入りでも見つけたのだろう。 今日は酒の当てが外れたな、と思いながら、ゾロは浮かれた足取りの赤い髪の上司の後をのしのしと着いていった。 やがてここだよ、と示されたのはオトナのビデオ屋と飲み屋とに挟まれた、細い地下へと続く階段。 入り口と思われるその脇には看板が一つ。派手なネオンやピンク色の文字に彩られた看板ではなく、よくカフェの店先にあるようなブラックボードだ。 そこに達筆なのかヘタクソなのか判断に迷う縦書きの流し文字で、大きく店の名が書いてある。 「……『おつまみ屋』…?」 聞き慣れぬ響きに片眉を上げたゾロの隣で、シャンクスが笑った。 「読んで字のごとく、おつまみするんだよ。オ・ツ・マ・ミ」 はぁ、とイマイチわからぬまま返事をしたゾロに、シャンクスはにまぁっとしたあの特有の笑いを浮かべた。 「ここはお摘みできちゃう店なのさ。そりゃぁ……色んなモノをね」 「……はァ」 「お?オツマミを舐めんなよゾロ。いいか摘まむと一口に言っても色んなテクニックが必要でなぁ…」 そう言いながらシャンクスの指先がくりくりと空中で卑猥な動きを繰り返す。 そういえばこの上司に限り、頭が緩んでいるのは春に限ったことじゃなかったな、と思い返すゾロの隣で、シャンクスは何を思い出したのか突然柔らかい顔になった。 「それになぁゾロ、ここの子はいい子なんだぞ〜」 シャンクスを初めて見た時、ゾロは正直ただのエロ親父だと思った。 けれど実際に働いてみて驚かされたのは、相手を巻き込むカリスマ性、手腕、そして何より相手の事を見抜くその洞察力の高さだった。 「色白美人で健気で可愛い。しかもこの店もな、身内の入院費を返すために寝る間も惜しんで働いてるようなもんなんだ」 シャンクスの目に止まったのだから、きっとそいつは人間的にもいい女に違いない。 けれどそんな境遇の人間はこの町には沢山いるだろう。そう思いながら、ゾロは上司の話を耳に流し続けた。 「俺自身……ちゃんにはもう何度もお世話になっててさぁ…」 いや〜そのテクも凄いのなんの。病み付きだよ。 ヤニさがったシャンクスの顔を見ながら、ふとその響きに思い出される顔があった。 そういえば年中ぽわぽわしていたあいつは、やっぱりこんな季節の生まれじゃなかっただろうか。 一瞬懐かしい想いが甦って遠い目になったゾロはしかし、上司に付いて入ったその店で目を剥むくことになった。 立ちすくむ、だなんて、人生において自分にはありえないことだと思っていたのに。 狭い階段を降りて左手、小さな扉を開ければ温かな空気と落ち着いた淡い照明が出迎えた。 黒を基調にしたカウンターに、ソファが数席あるだけの狭い店内。 「ようシャンクス、いらっしゃい」 カウンターの向こうから男の明るい声がかかった。その声が、シャンクスに続いて入ったゾロを見て小さく息を飲む。 その気配に目をやったゾロは、まるで雷に打たれたようにその場で動けなくなった。 薄暗い店内でもきらきらと光を零す金の髪。 大きく見開かれた目の奥で、淡い灯りを吸い込んだ海が不思議な色に煌く。 見間違えるはずもない。 喧嘩相手であり、一番の親友だった高校時代。 誰よりも傍にいて、そして卒業と共に永遠に手離したその相手。 「………、」 サンジの呆けたような唇が声も無いまま、小さく自分の名を呼んだ。気がした。 「開店前から悪いね〜」 呑気な親父の声が、逸らせなかった互いの視線を解いた。 サンジは慌てて笑顔を戻すと、カウンター席についたシャンクスにお絞りを差し出した。 ゾロも動けなかった足を無理矢理引き剥がすように、その隣に腰掛ける。そのゾロにも熱いお絞りが同じように笑顔で渡された。 ゾロはじっとサンジの横顔を見た。カウンターの中で何やら作業する金色でまん丸な頭、白い肌、特徴的な眉も申し訳程度の顎ひげも、何も変わっていない。 ブルーのシャツに隠れた体躯だけは幾分筋肉がついたのか、少し逞しくなった気がする。 けれどあのよく知る強い眼差しだけが、違う。不躾なまでに絡むゾロの視線はわかっているだろうに、ぎこちなく笑顔で逸らされる目線。返ってこない強い光。 それが酷く違和感をともなって、ゾロを不快にさせた。 「ところで今日はサンちゃんだけ?」 いつもの面子はまだ?と店内を見回すシャンクスに、サンジは困ったように頷いた。 「なんだか体調を壊したとか急用とかでさ、だから残念ながら今日のお相手は俺だけだ」 悪ぃな。そう笑うサンジにシャンクスは大げさに手を振ってみせた。 「いやーサンちゃんだったら俺、毎日でも通っちゃうよ」 『お相手』 その単語に、ゾロは知らず眉を寄せた。 「ありがとな。…今日もいつものコースでいいか?」 「勿論」 笑い合う二人のやりとりに、ゾロは益々自分の気持ちが降下していくのがわかった。 見たところ個室のようなスペースもないこの店がどういうシステムか知らないが、シャンクスの先ほどの笑いが甦る。 摘まむ、ああいった意味で、体を差し出す…その対象が――サンジだというのか。 カウンターの中で手を動かすサンジの、変わらぬスラリとした背中、締まった腰にかけてのラインを目にしながら、ゾロはぎゅっと眉を寄せた。 先ほどは聞き流していた定番な身の上ストーリー。 その現実が目の前の男のものだと言う事に、ひどく打ちのめされていた。 ちゃららっちゃ・ちゃちゃちゃ、ちゃららっちゃ・ちゃちゃちゃ その時不意に能天気なメロディが店の中に鳴り響いた。 打ちのめされていたゾロ脳裏を、あざ笑うかのようなQPがくるくると踊る。何十年も変わらないあの定番な音楽。 「あ、もしもしベンちゃん〜?」 携帯を懐から取り出したのは隣のヒゲ親父。ベンというのはシャンクスの同居人の名前だ。この上司とはかなり昔からの付き合いらしく、ゾロも何度か助言を貰ったことがある。 シャンクスはえ、とかきゃーとか突然親父らしからぬ悲鳴を上げると、慌てて鞄とコートを掻き寄せた。 「悪いゾロ、今日は俺先帰るわ!ベンちゃんが超怒ってる!」 「……また何やったんすか」 「何だろう、どれがバレたんだろうなぁ!?」 どうやら心当たりが沢山あるらしい。常に何かを悟ったようなベンの顔を思い出し、この上司と暮らすには一筋縄どころじゃいかないのだろうな、とゾロはそっと苦労を推し量った。 「来たばっかで悪いねサンちゃん!また今度埋め合わせするから」 「いいよ、ベンさんによろしくな。ちゃんと謝れよ」 シャンクスはほろ酔い気分もどこへやら、慌しく再び小さな扉の外へと駆け出して行った。 騒がしい上司が退場して、急に店内はシンと静まり返る。 開店前とシャンクスが言っていたが、まだ他の客も来る気配がない。 二人だけの空間。気まずい沈黙に、先に口を開いたのはサンジだった。 「元気…そうだな」 カウンターごしに、カランと氷の入ったグラスが置かれた。ゆっくりと注がれる琥珀色の液体。 ゾロはそれを見つめながら、ようやく重い口を開いた。 「お前は…ずっと実家のレストランで働いているんだと、思ってた」 高校卒業したら専門に通って、それと同時に実家で働き始めるのだと。嬉しそうに語っていた顔が今でも思い出される。 「…レストランじゃなくたって…これが俺の、今の仕事だ」 ことん、とグラスの脇に差し出された小鉢。 そっと添えられた黒塗りの箸を手に取って、ゾロは小さく手を合わせた。 「相変わらず綺麗なんだな」 サンジが小さな声で、柔らかく呟いた。 道場の修業で小さい頃から身についた礼儀作法。食事をする時の姿勢や箸捌きが綺麗だと、そういえば昔サンジにはよく褒められた。 小鉢の中身はほうれん草としらすの和え物。次いで出てきた鉢には、大根おろしと餡のかかった揚げだし豆腐。 酒の合間に次々に差し出される料理を、ゾロはひとつひとつ黙々と口に運んだ。片端から夢中になって平らげていたと言ってもいい。 サンジもカウンターの中を行き来しながら、ゾロのペースに合わせて次々と料理を差し出す。 出来合いの惣菜なんかじゃない、暖かいサンジの味。 美味く…そして懐かしい。 噛み締める度に、色々な想いが甦ってゾロの胸を熱くする。 忘れていた。 いや、ようやく忘れる事ができていたのだ。自分の中に染み渡る、この溶けるように離しがたい味と温もりを。 ふと見上げれば、サンジは唇の端を緩ませてどこか楽しそうにゾロを見守っている。 サンジは人に料理を食べさせる時、決まってこういう幸せそうな顔をする。 見上げるゾロにようやく絡められた視線は、誇りを持って真っ直ぐで、そして深い。 ああ、そうだ、これがサンジだ。 どんな環境にだって、屈しないのがこの男だ。ゾロはそれを、誰よりも知っていたはずだった。 ……それでも。 カウンターの上の、空になった小皿たち。 それを片す為に伸ばされた白い手首を、ゾロはしっかりと掴んだ。反射的に振り払われそうになった手を、逃がさぬようぐっと力を込めて押さえつける。 「あの時こうすればよかった」 掴んだ手は少し冷たい。サンジの青い目が見開かれる。 「逃げたお前を追いかけて、ねじ伏せて、どうせ会えなくなるなら…こんな事になるくらいだったら」 誰かの手で、傷つけられるくらいなら。 大好きな実家でも働けず、こんな所でささやかな料理を作って満足して。 独りで何もかも背負うのは、昔からこの男の癖でもあり、どうしようもなく愛せる所でもあった。 けれどその為に、その身を易々と誰かの手に触れさせているだなんて。 「…ゾロッ!」 焦ったサンジを無視して、ゾロは手首を掴んだままサンジをカウンターの奥から引きずり出した。 ガシャンガラガラッと乗せてあった食器類が床に崩れ落ちる。箸立ても倒れたのか、黒くて細い塗り箸がザラザラと零れた。 「テメェ…こンの!」 暴れても手の力が緩まないのを諦めたサンジが、逆にするりとした身のこなしでキッチン部分とカウンターを乗り越えると、横滑りするような体勢で左足を繰り出してきた。 空を切るその威力に、思わずゾロは掴んでいた手を離す。けれど代わりにすぐさまその足首と腕を掴みなおすと、細い体をカウンターから引きずり下ろして後ろのソファに向かって放り投げた。 喧嘩なら腐る程してきた。 互いの癖だって、呼吸するようにわかっていた時期もあった。 「……ッ!!」 ソファに沈んだサンジを、ゾロは起き上がる前に上から更に圧し掛かって押さえつけた。 もがく腕をひとまとめに頭上で押さえつけ、凶暴な足を体重で封じる。 恐らく罵詈雑言を言うために大きく息を吸い込んだのだろうサンジの口を、言葉が飛び出す前に自らの唇で塞いだ。 途端ガリッと痛みが走り、鉄の味が咥内に広がる。 「……ッ」 口を離せば目の前に、ギラギラと自分を睨みつける青い炎。唇の端に滲ませるゾロの血。 ――おそらくはそれで、火が着いた。 ゾロは素早く首元からネクタイを外し、もがくサンジの手首に巻きつけて縛り上げた。 床に落ちていた食器類の中からばら撒かれた箸を数本掴むと、縫いとめるようにサンジの頭上でネクタイごとソファに勢いよく突き刺す。 「は!?な……ッ」 ゾロのありえない手段にぎょっとしたように目を剥くサンジを置いて、ゾロはその青いシャツをに手をかけると思い切り左右に引き破った。 ボタンが飛ぶ派手な音。中に着込んでいたのは黒いTシャツ、それを首あたりまでめくりあげれば現れたのは真っ白い素肌。 照明に照らされたほの蒼いその肌に手を這わせれば、サンジがビクリと震えた。 「……ッにしやがる!」 滑らかな感触を確かめるように腹から胸元に指を進めれば、ゾロの腰の下で押さえ込んでいた足が蹴り上げるように暴れ出す。 怒鳴るサンジを前に、ふとゾロは悪い笑みを浮かべた。 転がっていた箸を、もう一膳拾い上げる。 「おつまみが出来る店なんだろう?ここは」 サンジを見下ろし長く艶やかな箸を揃えて右手に持つと、ペロリと先端を舐めて見せた。 「俺にもさせろよ」 「ハ…んぁ!?」 サンジの薄い唇に、ゾロは黒い箸をもぐりこませた。白く並んだ歯列を上下に押し開く力に慌ててサンジが口を閉じようとする。が、もう遅い。 ゾロの握力はそれしきのことでは揺るがない。閉じられなくなった空間にひらりと泳ぐ赤い舌誘われるように、ゾロは自らの舌を突っ込んだ。 「…ぅ、ぐ…ん……ッ!」 慌てて奥へと逃げるべろを追いかけて、かき回す。深く舌を差し込んで、上顎や頬の内側、舌の付け根の裏側までも、とにかくサンジの内部の全てを堪能する。 首を振るサンジの顎を押さえつけて、開かせっぱなしの口元から唾液が溢れるのも構わずにこね回した。 合わさった口からどちらのものともわからない荒く熱い息が零れ、鼻に抜けるようなサンジの声が耳を濡らすのが心地良い。 やがて痺れてきたのかサンジの口元がガクガク震える頃になってようやく、ゾロは唇を解放した。 大きく口を開けたまま胸を喘がせているサンジの、たらりと力なく覗いた濡れた舌先に益々煽られる。 どこか放心したようなサンジの口から引き抜いた箸の先は、互いの唾液で濡れていた。 ゾロはそれを静かに構えると、今度は肌蹴た胸元へと伸ばした。 白い肌に、淡い薄紅の粒が埋まっている。小豆ほどの大きさの丸みを黒い塗り箸の先端で摘まめば、サンジが途端に息を呑んだ。 ぎゅっと唇を噛んだまま、信じられないといった表情でゾロの指先を凝視する。 しかし先ほどの余韻かその目元は赤く上気していて、ゾロは意地悪く笑った。 サンジに見せつけるように、くるりと箸先で乳首をなぞってみせれば大げさに体が震える。 「……な、にす…」 震える息を吐きながら、生理現象だろうか、摘ままれた粒は次第にこりこりとした固さを持って箸を押し返してきた。 ぷつんと完全に胸元から立ち上がった赤い実を、ゾロは箸で丁寧に摘まんだ。 少し引っ張りあげるようにして、そこに口を寄せる。 「ふェ、ぁッ…!?」 頭上で上がった変な声を無視して、小さな先端に舌先を這わせた。 少しざらざらした粒の先を舌の先端でこね、口を窄めて全体を吸い上げる。 「や、やめ……ッ、ぅ」 カリ、と歯を立てれば白い肌にふつふつと鳥肌が立つのが面白い。 一粒ずつ丁寧に味わいながら、右から左へ箸先は移動する。 やがて両の粒がゾロの唾液を含んでふっくらと赤くなったのに満足して、ゾロは再び箸を滑らせた。 腹の中央をつるりとなぞり、引き締まったラインを下ってへこんだ臍をひと撫で。 そしてぶつかったベルト。 ゾロはそれを箸と手で器用に外すと黒いズボンをずり下げた。 「へぇ」 口角が自然と上がる。 つつ、と箸先を肌に沿わせながらTシャツと同じ黒い色のボクサーパンツの、その膨らみをするりとなぞった。 その角度は明らかに上を向きかけている。 「やめろ、ゾロ……やめてくれ」 いつのまにか耳まで真っ赤になったサンジが震える声で言うのを聞き流し、ゾロはパンツの前の合わせ目部分を箸で割った。 金色の茂みを掻き分けて、既に兆し始めていたサンジ自身をゾロは箸で引きずり出した。 「…ぅ、う〜〜」 くぐもった呻き声を上げて、サンジの体がびくびくと震える。 「食べ物を掴む道具で、な、なんてこと…」 怒りなのか羞恥なのか卒倒しそうな程真っ赤になったサンジがうーうー唸る。 そういえば昔、どうして割り箸が嫌いなのかをサンジが語っていたことがある。 フランス料理や外国のコース料理は必ず銀のナイフやフォークで食べるだろう?なのにどうして日本料理だけは割り箸を使う店が多いんだ。 あの白く漂白された割り箸が、どれだけ料理の見た目と味をマイナスにさせていると思っている。 どんなに綺麗に盛られた料理でも、まず食す側の目に一番に飛び込むのはあの色気もなにもない白い箸だ。 木にだって綺麗な香りと質感があるのは勿論知っている。だけど日本にだって綺麗なお箸がちゃんとあるじゃないか。 自宅で割り箸なんて使う家庭は、まずないだろう? きちんとした道具で料理いただくこと。それが礼儀だ。それが愛情だ。 ふとそんな事が思い出されて、なるほどとゾロは頷いた。 黒くて深い色をした艶やかな箸に挟まれたサンジの性器は、赤味を帯びてはいるが肌の色のせいでピンクに近い。 凶悪な色をしている自分のモノに比べれば、綺麗な色と形をしている。 それを支える丸みを帯びた箸の黒が、より一層その美しさをを引き出している。確かにこれがもし割り箸だったら、なんと味気ない。 あの角張った白い木では、こんなに可愛いものを挟めるはずがない。 じっと見つめるゾロの視線が気になるのか、ぴょこりと顔を覗かせかけていた赤い先端がじわじわ伸びてきてぷるりと震えた。 「馬鹿野郎!見てんじゃねぇ…ッ、は、離せ、よ…!!」 体をよじって暴れるサンジの動きに合わせて左右に逃げる性器を、器用に黒い箸で摘まんだままゾロはごくりと喉を鳴らした。 なるほど。とても…美味そうだ。 「ひぎゃッ!!」 ゾロは活きのいいサンジのモノの根元を左手で支えると、箸の先を亀頭部分の皮にもぐりこませた。 未知の生物みないな叫びをあげて、サンジの動きが止まる。 まだ充分に現れていない赤く熟れた中身に添わせてぐるり、箸を滑らせる。皮と身の間を剥がすように丁寧に。 「や……やめ、…ッヤ…」 頭上から漏れる弱々しい声とは裏腹に、ゾロの左手に収まっているものはどんどん固く熱を増す。 ゾロは器用な箸捌きで優しく丁寧に、サンジ自身が飛び出してくるのを手伝うようにつるりと皮を剥き下ろすと、そのくびれ部分をしっかりと箸で支え持った。 泣きそうな青い目を見返して、一言。 「いただきます」 「………ッ!!」 ゾロはまるで天麩羅でも食べるかのようにぱくりと先端にかじりついた。 |
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