たこやき
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 ※このお話は5月1日現在コミック未収録の、えーと何話でしょう。
 ある事件が一端落ち着いてみんなで仲直りたこ焼きパーティしてる所の後の妄想になっております。
 ルナミがメインです。
 なんか寝る直前にがーっと書いたので、そのうちまた手直しするかもしれません。
 
 ↓それでもOKな方はどうぞ〜
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「美味しかったのよ、ほんとうに」
 
 きらきらと眩しく青い海が照り返す甲板。
 広い広いサニー号の片隅で、ナミは目の前に立つルフィを睨みつけた。
 
「…だから涙が止まらないのよ」
 
 悪い?
 
 そんな、いつものように堂々とした態度。
 けれどそびやかした肩は酷く小さく、ナミは大粒の涙を堪えるように唇を噛んだ。
 
 
「知るわけないでしょ」
 アイツがたこ焼き作れるなんて。
 それがあんなに美味しいなんて。
 
 あそこに居た連中は全員、私の大切だった人の仇。
 そいつらがどんな考えで、どんな生き方をしてようと、関係ない。
 いつかは自分の手で、ぐちゃぐちゃに全部叩き潰してやりたいと思っていた存在。
 それ以上でも、以下でもない。
 だから。
 
 
「知りたくなんてなかった」
 握った拳に血が滲むような、憎悪と孤独と悲しみに満ちた8年間。
 
 どんなに泣いたって、あの人は帰ってこない。
 どんなに謝られたって、憎しみが消えるわけもない。
 どんなに今が幸せだって、あの時孤独に耐えていた自分が救われるわけもない。
 
 
「知りたくなかったわ、本当は、こんな味」
 小さく、小さく呟いたナミの肩を、ルフィがゆっくりと抱きしめた。
 出会った頃はナミよりも低かったその体躯は、数々の冒険と戦いを経てしなやかに成長し、今ではまっすぐな瞳を少し見上げるようにさえなった。

 悔しい。
 頭ではわかっていても、感情がついていかない。
 アイツが実はいいやつだってわかってはいても、この胸の奥から憎しみは消えない。
 贖罪を求めているわけでもないし、この手で殺めたいと思っているわけでもない。
 矛先のない感情はそのまま涙となって勝手に零れ落ち、まだ新しい船木を濡らす。
 
 震える肩を抱くルフィの腕が、強く熱い。
 
「たこ焼き、美味かったか」
 天気の話をするような口調で、ルフィが言った。
 ナミはうつむいたまま、それでも小さく頷いた。
 
「美味かったなら、それでいいよ」
 
 ん。
 
 ひとつ頷いて、ルフィはぽんぽんとナミの肩を叩いた。
 あやすように、受け止めるように。
 その顔はきっと笑っているのだろう。
 
 涙を拭う自分からは見えなかったけれど、ナミはその胸に頭を預けて、小さく鼻をすすった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 なんかね、どうしてもナミにはあのたこ焼きパーティのシーン、色々葛藤があったと思うんですよね。
 
 
 さて、
 シリアスのまま終わりたい方はこのままブラウザをお閉じください。
 
 
 ゾロサンがいねぇ!ておさまらない方は(笑)スクロールどうぞ。
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「なみっすわん……!」
 
 ぎりっとハンカチを噛み締めてサンジが唸った。
 階段の影からそっと、抱き合う二人の様子を覗き見たのは偶然だ。
 ナミが今一番心を預けられる相手はルフィしかいない。
 それをわかってはいても、できるなら今すぐルフィを突き飛ばし、あのやわらかな肩を抱きしめてあげたい。
 でもそれはできない。
 ナミを抱きとめられるナイトは今、悔しいがルフィだ。
 
 そしてもう一つ、飛び出せない理由が。
 
「…ッ、おい、力入れんな、出るだろうが…ッ」
「とっとと出ちまえクソ野郎がッ…」
 
 後ろからぎりぎりと万力のようにサンジを抱きしめて放さないぶっとい腕が。
 この腕がナミの元へと行くのを阻むのだ。
 
「てめぇ、未練たらたらでいつまでもデバガメしてんな。ナミはルフィのもんだろうが」
「わーってるよ!ちくしょう俺が抱きしめてやりたかったのに〜〜」
 泣く泣くナミの方へと手を伸ばすサンジの腕を、ぎりぎりとゾロの腕が締め上げた。
 
「…てんめぇ、覚悟しやがれ!」
「…ふぁ、馬鹿テメ、そんな急に、ア、あ……ッ!」
 
 こんな筋肉やだようナミさあああん!
 そんなサンジの悲鳴は、ゾロの口にあっけなく吸い込まれて消えていった。
 
 
 
 
 





*END!*








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08.05.01