KOAKUMAラヴァー 18
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(18)


* * * * *



 いつもの夢だった。
 でも夢なのに、そこには昼間知ってる姿のサンジがいた。
 制服を着たままゾロの上に跨って、両手が胸に置かれている。
 俯く表情が、前髪に隠れて見えない。

「ずっと見てたんだ」
 サンジの声が聞こえる。
 動けない体は何故か、全ての感覚が遠い。

「お前が左腕の怪我で困ってるのを見て、助けてやれないかなって思って。
 でも助けるには夢で会うしかなくて。
 …俺の本性、晒すしかなくて。
 でも、ゾロが助かるなら、それでもいいかなって」

 小さく淡々と、サンジは言葉をこぼしていく。
 いきなり勝手になんだ。
 何でもいいからこっち向け。
 こっち向いて言えよ。
 
 色こそ明るくはないが、昼間のサンジの髪も、ふわふわと柔らかいと知ったのはいつだっただろう。
 あの髪をかきあげてその顔を見たいのに、手が動かない。声が出ない。
 内心でもがいてる間に、サンジが突然ぐずっと鼻を鳴らした。

「だって、ずっと、――き、だったから…っ」

(――!!)
 震えるサンジから落とされた、思いもよらない言葉に、一瞬ゾロの思考が止まった。

 のろり、サンジが初めて顔を上げた。
 そして青い目をぐしゃりと歪ませながら、無理やりのように笑う。

「…ごめんな、未練がましく乗って」
 ぐしっと鼻を鳴らしながら、制服の裾で目元を拭う。

「ほんとはさ、ゾロの腕、ちゃんと治せるんだ。
 でも、俺、ゾロとこうする理由が欲しくて。
 だから中途半端にしてた…でもこれで、もう大丈夫、だから。
 俺の我侭で、ごめん」

 サンジは一度ぎゅっと目を瞑ると、ひとつ深呼吸をした。
 次に目を開けた時、それはいつもの夜の顔になっていた。

 今ならわかる。嘘を吐くのに長けた、艶めいた笑顔。

「バイバイだマリモちゃん。楽しい夢だったぜ」

 サンジが心持ち首を傾げて、ぐっと前髪をかきあげる。

「お前の剣道やってる、真っ直ぐな立ち姿、いつも見てた」

 カッコイイから、大好きだ。

 そしてふにゃ、と笑って。
 サンジは腰を屈めるとゾロに顔を寄せた。
 重なる唇の柔らかな感触。
 滑り込む舌の、甘さ。

 頭の芯が溶けるようなキスは、そのままゾロの意識を奪って記憶ごと闇に沈めた。



 * * *


「…思い、出したッ…!!」
 ベッドからがばっと起き上がるなり、ゾロは拳を布団に叩き付けた。
「あの野郎…!」

 何がギブアンドテイクだ。
 何がせっくす大好きだ。
 
「…ふざけんな!!」





*19へ*





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2012/12/14