KOAKUMAラヴァー 13
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(13)



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「サーンちゃん」
 夕暮れの商店街。
 突然掛けられた声に、歩いていた金髪がくるりと振り向いた。

「エース!」
 驚いたように眼鏡の奥の青い目が瞬いた。
 サンジが通り過ぎた電柱からぴょこりと飛び出たのは、大学生だろうか、パーカーにメッセンジャーバッグを掛けた黒髪の男だった。
 
「珍しいな、こんな時間に。エースも夕飯の買い物?」
 サンジの言葉に、エースと呼ばれた男はそばかすの浮いた顔に人懐っこい笑みを浮かべた。
「うんそれもあるけど、今日は週一のここのタイムセールだから、サンちゃんも来るだろうなって思って待ってた」
 ビンゴ!と指差す男に、サンジも苦笑する。
「なんだよ、わざわざ待ってなくたって用事ならメールで言ってくれればいいのに」
 サンジの言葉にエースは指先をちちっと振ると、親しげに肩を組んだ。
「わかってないなぁ。サンちゃんにひとめ会いたかったってことだよ」
「…相変わらず上手いなぁ」
 サンジも照れたように笑う。

「ところでさ、サンちゃん最近大丈夫なの」
「え?」
「またとぼけちゃって。二人のよ・る・の・こ・とv忘れないでよぅ」
 思い当たったのか、サンジの頬が真っ赤に染まった。
「ここんとこずっと来てないからさぁ。俺寂しい一人寝だよ?」
「なっ、なに言ってんだよ!知ってんだぞ!お前が最近あの変なおっさんと同居始めたの!」
「あら、バレちゃった?てかもしかしてそれで遠慮しちゃった?」
「…いや、そんなんじゃなくて。その…」
「なに、もしかして他にお気に入りが出来ちゃった?え、マジマジ?もっと詳しく!」
 ぐいぐいと迫るエースの顔を押しのけて、サンジが慌ててスーパーを指差した。
「てか早く入らないとタイムセール終わっちゃうだろ!もう!」
 頬を膨らませて怒るサンジが、エースを引きずるようにスーパーへと消えていく。


 その後ろ姿を、ゾロは呆然と眺めていた。

 商店街のざわめきが酷く遠い。
 ゾロはしばらくそこに立ち尽くしたまま、動けなかった。

 サンジを見つけたのは、部活の友人と駅前のファーストフード店に寄った帰り道、ただの偶然だった。
 別に二人の話を聞くつもりもなかった。
 けれど眼鏡を掛けた昼間の姿のままのサンジが、誰かにああやって親しげに笑う姿にびっくりしてしまって、気づけば足が止まっていた。
 自分の前じゃろくに目線も合わないサンジが。

 そして聞こえてきた会話に、ああ、とゾロは今更ながらに気づいた。

「そうか、べつに俺じゃなくてもよかったんだよな」
 そもそもはっきり言ってたじゃないか。
 自分を相手にするようになったのは、いい条件の相手が見つかったから。
 怪我を癒す代わりの食事。
 ギブアンドテイクなんだと。

「……くそっ」
 わかっていたはずなのに、ざくりと棘のようなものが胸に突き刺さって痛い。
 それと同時に、無性に腹が立った。
 それが誰への怒りなのかもわからず、ゾロは小さく目を瞑った。

 今初めて、サンジのことがこんなにも気になっていたのだと、知った。






*14へ*




※ちょっとエースに対しての設定が趣味丸出しですいません。
おっさんてのはご想像におまかせします(笑


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2012/12/05