KOAKUMAラヴァー 10
-------------------------------------------------------------------------------



(10)



* * * * *


 これは夢か…。
 いや、マジで夢の中だったなと思い直したゾロの足下で、サンジがごろんと寛ぎながら両腕を頭の下で組んだ。

「で、俺ら夢魔は相手からそれを貰うと同時に、交換にあるものをあげられるんだ。
 本来は相手を気持ちよくしたり、痛みを感じないように麻痺させる為の成分だと思うんだけど」
「…なんか蚊みてぇだな」
「あ!?」
 ガン!とショックを受けた顔をした男を下敷きに、ゾロはそうか、と頷いた。

「それで俺の腕の痛みが消えたってわけか…」
「あー…うん。で、俺らもさ、色々ご飯食べるのに苦労してるわけよ。いっくら夢だからっつっても毎回毎回同じ誰かをターゲットにしたら、流石に怪しむじゃん?」
「確かにな」
 もしそんな状態になったら、自分はよっぽど欲求不満か、何かに憑かれてるか、病んでるかのどれかを考えるだろう。

「そしたら偶然さあ、お前の噂を聞いたんだよ。怪我で困ってるみたいじゃん?じゃあそれを助ける代わりに、お代として精を貰えばいいかな〜って思って」
 サンジが猫のように笑ってゾロを見上げた。

「ギブアンドテイク!お前は剣道を続けられるし、俺は食料調達に困らない!いい話だろ?」
「……」
 ゾロは小さく息を吐いた。

「やっぱり治ったわけじゃ、ねぇんだな」
「…!」
「そうそう、奇跡みたいな事は起こらないよなぁ」
 左腕をゆるく撫でたゾロに、サンジは小さく目を見開いた。
 唇を開きかけ、そして再びぎゅっと引き結ぶ。

「…そうだけどよ」
 ぷくっと頬を膨らませて、サンジがつんとそっぽを向いた。
「普通なら選手生命絶たれて終わりだろ。それを俺がこうして一時的だって痛みだけでも消してやったんだ。それだけだって奇跡的に凄い事だろうが」
 その言葉に、今度はゾロが目を見開くと小さく笑った。
「違いねぇ」
 くしゃり、ゾロは身をかがめるとサンジの髪をかき回した。
 蜂蜜色の髪はなめらかで、するりと指の間を零れ落ちる。

「ありがとな」
 ゾロの言葉に、サンジが再び唇を引き結んで、何かを我慢するような不思議な顔になった。
 じっと青い瞳がゾロを見上げる。
 見返していれば、するりと白い指先が伸びてゾロの首に回った。
 ふわりとした温かさと、甘くは無いけれどサンジの体臭だろうか、いい香りが鼻先を掠める。
「優しいな、ゾロ」
 サンジがゾロの首筋に顔を埋めるように身を起こした、と同時に気づけばくるりと天地が逆になった。
 トサリとした重みが、今度はゾロの腰にかかる。

「…ん?」
 見上げたサンジが零れる髪を掻きあげ、ぺろりと唇を舐めた。
「てなわけで遠慮なく、いただきまーす♪」
「…っ、てめ!」
 やられた!と思った時には既に体が動かない。
 今し方さらりと名前を呼ばれたのだ。油断した。

「ちょっと待て!結局お前は昼間のアイツと同じなのか?!」
 いそいそゾロの下着を下ろしにかかってるサンジに向かって叫ぶ。
 サンジはくりっと首を傾げた。
 
「…それとも、二重人格ってやつか?」
「うーん、こっちが本当の姿って言っただろ?
 記憶は繋がってるしどっちも同じ俺なんだけど、こっちの姿だと理性があんま効かないっていうか、本能丸出しになっちゃうんだよね」
 えへっとわざとらしく舌を出したポーズを取ったサンジに、ゾロはげんなりした目を向けた。
「髭の生えた野郎が可愛いこぶんな」
「ちっ、うっせぇな。やっぱ俺、魅了の力弱いのかな〜」
 途端にガラっと態度を変えて、あーあとふてくされる。
 そりゃ夢魔ってだけで可愛いわけねぇか、女の子みたいに柔らかくねぇもんな〜とブツブツ言う、そのコロコロと変わる表情が面白いと思う。
 さっきの作ったポーズより、そっちのが可愛…。
 うっかり考えかけて首を振ったゾロの前で、サンジがアホのように全開の笑顔になった。

「まぁつまり、気持ちいいこと大好きって気持ちが抑えられなくって。
 とにかくせっくす大好きになっちゃうんだぁ!」

 ぽいっとゾロの衣服を放り投げ、サンジがゾロのものに手を添えた。
 自ら脚を開いて跨ったまま、後ろの割れ目にゾロを擦りつけながら、ゆるゆると撫でさする。

「だから早く…硬くなれよ」
「……!!」
 うっすら目元を赤く染めたその姿に、ゾロの頭の奥で何かが切れた。

「くっそ!テメェ覚えてろよ…!!」
「おっさっすが剣道部期待の星、勝負には強いね〜」

 嬉しげな声に奥歯を噛み締めながら、ゾロはその夜もサンジに食べ尽くされたのだった。





*11へ*



-------------------------------------------------------------------------------
2012/11/28