KOAKUMAラヴァー 2 ------------------------------------------------------------------------------- |
(2) * * * * * その日から、再びゾロは剣道の練習に参加するようになった。 撮り直したレントゲンを前に、医者は何度も首を捻っていたが、治った理屈なんてどうでもよかった。 とにかく夢を諦めずにすむ、その一心で、ゾロは今までの分を取り返すかのように練習に打ち込んだ。 「……また、か」 日暮れまで練習をし、一人最後まで残っていた道場を片付けると、床に膝を折り伏せて礼をする。 その時床についた腕が、ズキリと痛んだ。 おおよそ十日。 治ったかに見えたゾロの腕は、日が経つにつれて再びあの痛みを訴え始めた。 腕の中の筋が引き剥がされるような、深い痛みだ。 けれど、その痛みが現れる頃、またあの不思議な夢を見るのだ。 見知らぬ男が自分の上に乗り上げている、あの夢。 それは必ず『ぞろ』と甘い声で呼ばれる所から始まる。 その声に支配されたように動けないゾロの上で、男は自ら白い体を開くと、いつの間にか熱く高ぶっていたゾロの起立をゆるやかに飲み込んでしまう。 そこから始まるのは激しい興奮というよりも、ひたすら溶けていくような気持ちよさだった。 体の中に熱いものが満ちて、解放すると同時に受け入れる。そんな感じは、どこか精神統一に使う呼吸法にも似ているかもしれない。 幽霊だの不思議な現象を信じるわけではなかったが、けれど確かに、夢で自分は男と体を繋げているのだという事を、ゾロも認めざるを得なくなっていた。 決まって顔はわからず、けれど体付きや仕草で同じ男だとわかる。 そしてその夢を見た翌朝、腕は再びその痛みを綺麗に消しているのだ。 ギシ、ギシ、と暗闇の中でベッドが揺れる。 ゾロが気づいたのは、自分の部屋の中だった。 (……来たか) 例の夢だ。 夢を見るのも三度目を越えた辺りから、段々とゾロもこの現象に慣れてきた。 力を抜いて、横たわったまま目の前を見上げる。自分の腹にかかる僅かな重み。 シャツの前だけを開いた一人の男が、ゆるく腰を動かしている。 声は聞こえないが、僅かに荒い息遣いが空気を揺らしている。 腹筋に置かれた手が、じわりと汗ばんでいる。 いやそれはゾロ自身の汗だろうか? 絞ったベッドヘッドのライトだけで、辺りは薄暗い。 けれど目を凝らせば見えるだろう天井辺りは、真っ暗な闇に溶け込んでいて、ただ首から下の白い肌が艶かしく浮かび上がっているだけだ。 そもそも男の肌に色気を感じるだなんて。 「……くそッ」 何なんだお前は。 見えないその顔を睨み上げれば、ふ、と男の動きが止まった。 そしてどうやら笑ったようだった。 それがわかったのは、目の前の引き締まった腹が小さく震え、同時に咥えこまれた内部がきゅっとゾロを締め上げたからだ。 ゾロのように鍛えた筋肉はないものの、無駄な肉付きがないのに柔らかい、しなやかな体だ。 次第に快感にぼやけて行く頭を振るいながら、ゾロは必死に目の前の男を見上げた。 |
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