はじめてのおつかい |
(ハゲ、マリモ、剣馬鹿、万年寝太郎、ハラマキ、穀潰し、クソエロミドリ…!) シャカシャカと生クリームを泡立てながら、サンジは思いつく限りの悪態を心の中で並べ立てていた。 荒っぽくかき回されるボールの中、罪のないクリームがびちゃびちゃと跳ねる。 午後1時を少しまわったメリー号のキッチン。お昼を食べ終わった子供らの「上陸だ〜!」と騒ぐ声がきゃーきゃーと甲板から聞こえる。 しかしのどかな雰囲気に反して煙草をふかしながら手を動かすサンジの眉間にはぐぐっと皺が寄っている。 何を隠そう、サンジは今朝から滅茶苦茶機嫌が悪い。 それもこれも、全部あのクソ剣士のせいである。 ガシガシと泡だてきを回していた手を止めて、ピンクのエプロンの胸元にそっと指を這わす。 恐る恐る触れた厚い布越しにも分かる、つんと立ち上がったモノ。 それに触れた途端ぴりっとした痛みが走って、サンジはううう、と一人真っ赤な顔で唸ると再び何かの怒りをぶつけるがごとくガッシガッシとクリームと格闘し始めた。 麦わら海賊団、この小さくとも元気いっぱいの船の上でサンジとゾロはなんというか、昼間からおおっぴらには言えないコトをしちゃってる仲だったりする。 昼間はお互い喧嘩の絶えない野郎同士。しかし夜は一転してしっとりと、早い話が酒のつまみと一緒にサンジもぺろっとゾロにいただかれちゃったりしている仲だ。 魔獣と呼ばれているくせに単なるでかい犬と変わりないゾロの緑頭を撫でてやるのがサンジは結構好きで、そうすると向こうもサンジの首筋に顔を埋めてぎゅうと抱きついてきたりして。 その男臭くてムサイ感触に、たまにアレ?俺ってば日々思い描いていた輝かしい未来計画図からおもックソ道踏み外してんじゃね?とか考えてしまうけど、いちゃらぶこいている毎日は充分幸せでほわほわしていて、サンジのそんな疑問はあっという間に溶けてしまうのだ。 ただひとつ問題は。 (クソッ、やめろって言ったのに!) サンジの手にした泡立て器が、ボールのふちにぶつかってがちっと大きな音を立てる。 ゾロにねちっこい噛み癖があることである。 ゾロの前戯ははっきりいってしつこい。 獣属性であるが故なのかはわからないが、まぁ時間をかけてくれるのはサンジとしてもOKなのだが、マリモはどうも。 ……大の乳首好きらしいのだ。 はあぁ、と大きなため息をこぼしてサンジは窓の向こうの晴れ渡る空を見た。 最後までコトに及ぶのは数日に1度なのだが、ソロはほぼ毎日人気のない時間や場所でサンジの隙を見つけては襲い掛かってくる。 その…サンジの乳首を目当てに。 おかげでサンジの元々弱くて情事の後は鬱血やら歯型やらがくっきり悪目立ちする薄い皮膚は、擦り切れて真っ赤に充血してしまっている。 昨日などはとうとう、痛くてマジ泣きを入れてしまった。 あれはまだ日も高いうちのこと。倉庫に小麦粉を取りに入った途端、閉まるドアの隙間から身を滑り込ませたまるでストーカーのようなゾロに突然壁に押し付けられた。 「……ッ、てめ」 文句を言いかけた口はすぐに荒々しく塞がれる。 ゾロに毎日求められるのはそりゃサンジだってまんざらでもない。 だからこうしてクルーの目を盗んで行う行為は、あー俺ってこんなに愛されちゃってるんだなぁなんて思ったりして結構嬉しいのだ。 まぁつまりはろくな抵抗もせず、ゾロの手に毎回流されているわけで。 「あッ……」 互いに暖かな舌を絡ませているうちに、ネクタイはそのままにシャツの中ほどのボタンだけを外され、露になった白い肌にゾロの手が伸びた。 既にふつりと立ち上がっていたピンク色の乳首が硬い指の腹でつままれる。 剣だこの出来たゾロの指は少しザラザラしていてサンジの肌を刺激する。 シャツの隙間からそこだけを表に出すと、ゾロは迷わず口を寄せた。 「んッ」 ぴちゃりと濡れた感触に、サンジは息を飲み込んだ。 ざらつく舌先が小さくしこった塊をコリコリと左右に弄ぶ。 期待と条件反射でそこは既にふっくりと立ち上がっていて、ゾロにねぶられる度にちりちりともどかしい疼きが尾体骨を駆け上る。 窓から日の光がさらさらと差し込む薄暗い倉庫の中。 ゾロと自分の周りだけ、空気が濃くなったように熱が上がっていく。 扉を1枚挟んだ向こうからは甲板を走るクルーの声が聞こえてきたりして、そのスリルにますます煽られた。 「て…てめぇ、こんなに乳首フェチで…今まで一体どうしてやがったんだ?」 切れ切れの声で、サンジは胸元に張り付いているゾロの芝生頭を掻き混ぜた。 「…ァ?何が」 ペロリと舌の隙間から甘噛みされた突起を覗かせて、ゾロが目線だけでサンジを見上げる。 熱い息と吸い込まれる空気の冷たさが敏感な皮膚を交互に嬲って、サンジはふるっと知らず脚を震わせた。 「…お、俺とこうなる前、まさか薄着のナミさんの胸を見て想像したりとか、してたんじゃ…」 「んなわけあるか。てめぇに付いてるからいいんだろうが」 「んあッ」 さらりと赤面する台詞を言って、下らないことを聞いた罰だとでも言いたげにゾロが乳首を強くひねった。途端にぴりっとした痛みが走って、サンジは慌ててゾロの髪を強く引いて顔を上げさせた。 「…んだよ。時間ねぇんだ」 早くしろと、その台詞を言いたいのはこっちだ。しかし顔を上げたゾロの舌から濡れて光った自分の乳首が見えて、サンジはうぐ、といたたまれなさに言葉を詰まらせた。 痛いからヤメテ、なんてそんな可愛い台詞がサンジに吐けるはずもない。 それでもこのところずっと暇さえあればゾロに弄られているそこは、熱を持って痛みを増してくる。 今もゾロの犬歯の間からちらちらと覗く尖りは、ゾロの舌とは違う鮮やかな赤に染まっている。 サンジは荒くなる呼吸を飲み込んで、汗ばんできた指でゾロの耳をひっぱった。 「なぁ、も、そこやめろ…」 「断る」 即答された。 まるで所有権は俺にあると言わんばかりの即答ぶりだ。 しかも用は済んだとばかりに再びがぶりと歯を立てられて、サンジはひっと首をすくませた。 ゾロの歯で舐られるたび、痛いというか痒いというか、とにかくジンジンとした熱さが沸き起こる。 「…やめ、嫌だって!…ぅ、あッ」 「ならコッチかよ」 もぞもぞとシャツを掻き分けて、ゾロは鼻先から顔を突っ込むようにもう一方の乳首を探し当てた。 犬、いや違う獲物を見つけた魔獣が、牙を覗かせてニヤリと笑う。 ぴちゃりと生暖かい感触。肉厚の舌に硬い粒が押されてそっと輪郭をなぞられる。 「あッ…」 熱く漏らした吐息に、ゾロが目だけで笑った。 「テメェもうココだけでイけるんじゃねぇ?」 「あ…ばッ」 やめろ、と静止を振り切ってゾロの手がサンジのボトムの膨らみを探り当てた。 既に兆しかけていたそこをゆるゆるとなぞり上げられれば、ぞわっと腰が浮く。 悪戯を思いついたような強い光を目に宿して、ゾロはそのままサンジを追い上げる手を強めた。 布越しに与えられる、もどかしいけれと的確な快感。 「っ……」 仰け反った首から顎にかけてを、ゾロの舌がべろりと舐め上げた。 本当に大きな獣に食われているみたいだと、こういう時よく感じる。 ゾロの手はサンジを容赦なく攻め立てていく。 「あ……アッ、…イ…」 昇り詰める寸前、ぎゅっとゾロの手がサンジの乳首に爪を立てた。 「痛いっつってんだろうがぁぁあああッ!!」 涙目で思わず繰り出した渾身の蹴りは、倉庫の壁を突き破りゾロをメインマストまで吹っ飛ばした。 「おい」 ガチャ、と泡立て器を止めて振り返れば、いつのまにやら件の剣士がキッチンの扉に立っていた。 「あァ?」 思い切り顔をしかめてやれば、ゾロが人差し指を立ててちょいちょいと呼んだ。 ドアを背にしてその場であぐらをかく。どうやらクルーが入ってこないようにするつもりらしい。 丁度今朝早く港に着いたばかりで、船には見張り番のチョッパーくらいしかいないのだが。 「てめェ、俺は忙しいんだよッ!しかもそんな犬みてぇに呼ぶんじゃねぇ!」 そう低く牽制するも、言葉とは裏腹に体はふらふらとゾロに吸い寄せられているサンジもたいがい終わっている。 あれだけ腹を立てていても、ゾロを前にするとどうにも体が言うことをきかないのだ。 今ではその厚い胸板に鼻を埋めてみたいだなんて当たり前に思うようになってしまった。嗚呼レディの胸ならまだしも、自分で自分を殴ってやりたい。 「……来んじゃねぇか」 「るせぇゴクツブシ」 ガラ悪く吐き捨てて、サンジは座っていたゾロの膝を跨ぐ。 向かい合わせに座った格好で上から挑むように見下ろしてやると、ゾロはお決まりのようにサンジの黒いエプロンを掻き分けて中のシャツを引っ張り出した。 その手をサンジは片足でパンッと跳ね除けると、そのまま膝頭をゾロの首に押し当ててやる。 「オイ、今日はぜってーやらせねぇぞ。お触り禁止だこの乳首マニア」 ぐっと体重をかけて喉を圧迫してやれば、ゾロがほう、と感心したようにサンジを見上げた。 「おいテメェ、この体勢今度裸の時にもっかいやれ」 「ぎゃッ!?」 大きく開いた形になっていた股間を前から後へゾロの手が撫でて、サンジは体勢を崩して床に転がった。 「残念ながら今日の用件はそうじゃねぇ」 「そう言いながら何剥いてんだ!」 転がったサンジの背後からすかさず馬乗りになったゾロが、器用にエプロンの下のシャツだけを捲り上げている。 「違う。薬だ、塗ってやる」 そう言ってゾロがズボンのポケットから取り出したのは、手の平サイズのチューブ。 「あ?薬だァ?」 「おう。テメェ痛がってるみてぇだったから、ちっとそこで買ってきた」 「え……」 ゾロが。 あの乳首大好きで毎日齧る事しか出来ない、待ても覚えないあの獣が、サンジの為に薬を買ってきたとは。 思わず呆然と抱きしめて緑頭をわしわし撫でたら、ゾロにがぶりと首筋を甘噛みされた。 ひどく真面目な顔をした獣が、しぶしぶといった感じで顔をあげる。 「そういうのは後だ。まず塗るぞ」 「……おう」 サンジもなんだか神妙な気分になって、素直に頷くと自ら両手でシャツをまくりあげた。 エプロンの隙間から乳首を差し出すようにしてゾロを見上げれば、クソッとゾロが舌打ちした。 「無闇に誘いやがって、治ったらテメェ覚えてろよ…」 「ア!?」 ぐるぐると喉の奥で唸る様は、まるでお預けをくらった獣だ。 誘ったつもりなど微塵もない。 が、きっとゾロにとったらサンジが鍋を掻き回している動き一つにだって欲情できるに違いない。 サンジだって、ゾロの動作ひとつひとつに色香を感じてしまうのだ。 お互い、そういう相手であるのだから仕方ない。 サンジは笑って子供のようなゾロの頭をよしよしと撫でた。 チューブから半透明な軟膏を掬ったゾロの指が、そっと乳首に触れる。 体温で暖められた薬がぬるりと滑る感触に、サンジはぶるりと背筋を震わせた。 固く尖ったままのその部分に這わされた指が、そのまま中心から円を描いて押しつぶすように薬を塗り込んで行く。 ぴりりと薬の染みる感触に小さな痛みが伴って、サンジは小さく眉をしかめた。 シャツを握った手が小さく震える。 左が終わると、今度は右。 そして両方同時に。 つんと赤く立ち上がった粒はぬらぬらと光を放って濡れていて、ゾロの指がなぶるように全体を挟んでこね回す。 薬を塗っているだけのはずなのに、丁寧に塗りこめるその柔らかな動きはいつもの淫らな行為と同じだ。 「……ふ、ぅッ」 背を這い上がる慣れた快感に、かみ殺していた声が小さく漏れた。 すると突然、ゾロの指が痛いほどの力を込めて両方の粒をきゅっと摘まんだ。 「ふぃ……ッ!?」 そのままくにくにと激しい動きを始めた指に驚いて見上げれば、なんだか荒い息で乳首を見つめてる魔獣が一匹。 ぎゃあ!と慌てて逃げ出そうとするも既に遅し。 「てめ、やらないって……!」 「………悪ィ」 サンジの上から圧し掛かった獣の、はーッはーッと熱い息が首筋にかかる。 不埒な手はやがて胸から下半身へと滑り落ちていって。 「ちきしょう、俺も修行が足りねぇ」 「……ぁ、あ……ッ!」 何が修行だ関係ねぇよこの苔マリモが死にさらせアホ――!! と心中は罵詈雑言の嵐なのに、しかし口から漏れるのは甘い声ばかり。 結局はお決まりのパターンにもつれこんで。 「ちったぁ『待て』も覚えろこのクソ獣がぁぁあああッ!!」 最後は盛大にキッチンから蹴り出されたゾロを、見張り台からびくびくしながらチョッパーが眺めていた。 * * * ………おかしい。 街で市場を見回りながら、サンジはむむっと眉をしかめた。 色とりどりの野菜、果物、行き交う異国のレディたち。 普段なら心弾むそんな状況なのに、今のサンジはそれどころじゃなくなっていた。 というのも、先程ゾロに薬を塗られた部分が、どうも。 じんじんと脈打つように、熱を持ってうずいている。 歩くたびにシャツの布地に擦られる痛みと……そして中心を針か何かで弄くられたような、なんとも言えないむず痒さが広がるのだ。 この感覚がなんであるかは、よく知っている。 鳥肌と共に腰に落ちて行きそうな良からぬ疼き。サンジは小さく身を震わせた。 そろそろとシャツの上から撫でてみれば、布越しでも既にぷくりと立ち上がったその部分。 自分の手の感触ですら、チリっとした痛みがどこか気持ちいい。そしてもどかしく、鈍い快感。 いっそどこかで思い切り掻き毟ってしまいたい衝動にかられて、サンジはぎゅっとシャツを握り締めた。 「…くそっ……」 そして赤い顔を隠すように俯くと、足早に来た道を引き返した。 さきほど船番を替わっていた緑頭が、船尾で黙々と錘を振っている。 サンジは気配を殺して近づくと、鉄の棒を大きく振りかぶったその背中目掛けて思い切り蹴りをかました。 空気が動く気配を察知したのか、ぎりぎりでそれをかわしたゾロがサンジを睨む。 「何しやがるテメェ!」 「それはこっちが聞きてぇよ…てめぇ、……さっき一体何塗りやがった」 「あ?」 黒いオーラを放つサンジに、ゾロは錘をどすんと床に下ろすと不思議そうに首を傾げた。 「…何って、てめぇが痛そうにしてやがっから、薬」 「何の薬」 「痛み止めとかじゃねぇのかよ?」 「……」 買って来た人間がどうして種類を知らないのか。 サンジはむぅ、と唇を噛んだ。 「おい、テメェ薬買うとき店員に何て言って買ったんだ」 「あ?あー…『男の乳首とかに塗ってやる薬はねぇか』って」 したらあれをすぐに出してきたからよ、となんだか自慢げに胸を張る。 「……てめェ、ものにはもっと言い方ってもんがあるだろうがよ……」 ゾロのあまりのストレートさにがくりと肩を落としたサンジだったが、ひとつ良からぬ考えに突き当たってふと顔を上げた。 「おい、それって……」 『塗ってやる薬』? ちょっとまて。 その言い方だとまるで『塗ってあげる薬』じゃなく。 『塗ってヤる薬』って意味に取られたりとか…してたり、するんじゃね……? 「……おいゾロッ!さっきのチューブ出せ!よこせ!」 自分の考えに青ざめて慌ててとゾロの腕を掴めば、なんだか嬉しそうなゾロに突然ころんと甲板にひっくり返された。 「……あ?」 「おー丁度よかった、まだだいぶ残ってっから、後ろにも塗ってやろうと思ってたんだ」 青空を背にしたゾロがにかっと笑う。 「……は?ウシロ??」 「てめぇ最近よく擦れて痛いとか言ってやがるじゃねぇか。乳首もケツの穴も一緒だろ」 「……あああ!?」 うきうきと再びシャツを剥きにかかるゾロの意図を悟ったサンジが慌てるも、繰り出した蹴りは余裕で受け止められ、背後から馬乗りになったゾロにぺろんとシャツを剥かれてしまった。 こういう場面においては憎たらしいほどに手際が良い。 「ぎゃあああ変態!やめろっ、戻せ!」 「我侭言うな、すぐ終わるから」 「いらねェッつってんだろ!?」 半ば泣き叫ぶように振り返れば、ゾロはなんだか呆れたようにぽんぽんとサンジの頭を撫でて、ちゅっと唇を落とした。 「薬が染みるからか?駄々こねんな」 「違うッつってんだ!」 どうやら自分は薬を嫌がる子供同然に思われているらしい。 その事に益々腹が立ったが、肝心な所で鈍い男に泣きたくなる。 あれよと言う間に抵抗の緩んだ隙を突いて、サンジのベルトが外された。 そのまま下着ごとずり下ろされて、尻の半分が外気に触れる。 「な、マジ頼むから俺の話をッ……」 「うるせぇ」 すげなく一蹴され、ゾロの手がサンジ白い脚を割り開いた。 慌てて足を閉じようにも、ゾロの手がコレでもかってほどの怪力でそれを阻む。 「っ……」 白昼の甲板。ゾロの目の前に無防備に秘部を晒した格好に、サンジの肌が羞恥に染まった。 「ひっ!」 すぐさまぬるりと冷たい感触が、サンジの最奥に入り込んできた。 「あ、あ……ッ」 薬剤をつけた太い指が、ずぷずぷと潜り込んでくる。サンジは息を震わせてぎりぎりと甲板に爪を立てた。 「こんの…クソ馬鹿ッ……!」 しかし絶望に涙目になったサンジの様子を、ゾロは別の意味に取ったらしい。 「痛ェのか?染みんのか?……もう少しだから我慢しろ」 いつも乱暴で不器用な剣士が、信じられないような優しい態度で自分を気遣っている。 ついに野獣にも人間の気持ちが理解できるようになったのかと、普段のサンジならば感動にむせんだかも知れない。 しかし今日に限ってはその優しさがますます泣けてくる。 と、ぐるりと指が旋回して内部を擦りあげた。 「ふぁっ……」 変な声が出て、ぴくりとゾロの指が驚いたように止まる。サンジは慌てて両手で口を押さえた。 一度入り込んだサンジの中から、ずるりと指が抜け出て行く。 しかし抜け出た直後から、ジンジンと広がる熱と痒み。 粘膜に直に塗られた薬の効果は、乳首の時とは比べ物にならないくらい即座に現れた。 「あ……く、ぅんッ」 ふるるっと体を震わせて、なんとかその快感をやり過ごそうと手に力を込める。背後でちっとゾロの舌打ちが聞こえた。 「こんな時に感じてんな」 「ばッ、違っ……あ」 背中に落ちるゾロの息遣いにまで、敏感になった神経が撫でられるようにゾクゾクと反応してしまう。 そして間を置かずに再び大量のぬめりを伴った指が後ろに入りこんできた。 「ひぁ……っ」 最初に付けた薬の助けで、サンジのそこは二本の指を難なく飲み込んでしまう。 くちゅくちゅと熱心に軟膏を塗り込む音に、サンジは目を瞑って耐えた。 ぐるりと指を回されるが、内壁を擦り付けるゾロの指は優しく、性的な目的を持っていないことがわかる。 「う……っ」 なのにサンジの前はぐんぐんと硬く兆しを見せていて、うず、と思わず床に擦り付けるような腰の動きをしてしまった自分に、首筋が羞恥に染まった。 感じまいと全身を突っ張っているせいで、内股がふるふると痙攣する。 自分の中で動く太い指。 柔らかいく撫でるような動きに、たまらなくなる。 もっといつもみたいに、激しく、うねるように自分の中を抉ってくれればいいのに。 「ゾ……ロ…っ!」 真っ赤な顔をして涙を滲ませながらぶるぶると振り返ったサンジの顔に、ゾロが呆けたようにごくりと生唾を飲み込んだ。 「……ッ悪ぃ」 慌てて我に返ったように首を振ったゾロの、形ばかりの台詞。 目は既にサンジ赤いうなじやうっすらと滲む汗に釘付けになっている。 そそくさと内部から抜け出ようとする指を、サンジはさせるものかとぎゅうっと締め付けた。 「おい…!」 「ダメ……だ。抜くな……ッ」 焦ったようなゾロの顔を睨みつけて、きゅううっと、更に飲み込むように後ろの孔でゾロの指を食んでみせる。 内部は熟れたようにジンジンと熱くて、痒くて、もはや言葉を抑えてる余裕すらなかった。 「ゾロ、ソコ、もっと奥ッ……かゆ、い」 しかし何を思ったのか、ゾロはギラギラした眼差しでサンジを見つめながら指を内部でつつくようにちょちょいっと折り曲げた。 ひくひくとサンジの腰がゾロの指の動きに合わせて揺れる。 「ッ!も、もっと強くッ…!」 「…いいのかよ、こんな甲板でよ」 「い…からァっ!」 自ら腰を振ってゾロの指に擦り付けようとするサンジから、ふいにゾロの指がずるりと引き抜かれた。 「あ…ァ…なんでッ」 悲壮ともいえる顔で振り剥けば、ゴソゴソとゾロが自らのフロントをくつろげた。 そこから飛び出した赤黒い見慣れたモノに、サンジの喉が期待に鳴った。 「ん、欲しッ……、ねが、入れ……ッ」 もしかすると自分はうっとりと笑っていたかもしれない。サンジの後孔に起立した先端をひたりと押し当てた状態で、ゾロがビックリしたように動きを止めた。 「……?」 はふ、と浅い呼吸を繰り返して見上げれば、ゾロは物凄い形相でサンジを睨んでいる。 日焼けした肌が、うっすら上気しているようにも見える。 「?……動け、よッ」 「……もいちどゆえ」 ぽつり、とゾロが呟いた。 くちゅ、くちゅ、と悪戯するように先端がサンジの入り口をノックする。 「ふぃッ…」 待ちわびてたまらない感触に、サンジは体を震わせた。 「さっきの、もう一回言ったら入れてやる」 なんでイキナリ魔獣モードになってるんだか訳わからぬまま、サンジはそれでもゾロの硬い感触を取り込みたくて自ら腰を押し当てた。 ゾロの太くてすこしぬるついた先端が、サンジの柔らかな孔にくぷりと埋まる。 「い……いれッ…」 息も絶え絶えにゾロを見上げる。 しかしやりきれない痒みで涙がぼたぼた零れる視界に、ゾロのニヤけたオヤジ面が映った瞬間、サンジのどこかがぷちっとキれた。 「……いいからいれろっつってんだこんのクソバカがぁ!!」 「ぐふッ!」 ドカッと思い切り蹴り上げた足の裏が、ゾロの顔面にヒットした。 それでもサンジの腰をがしっとつかみ、体勢を崩さなかったゾロは流石と言うべきか。 たらりと零れた鼻血をぐいっと拭って、魔獣の顔でニィとゾロが笑った。 こめかみあたりに青筋がちょっと浮いている。 「後悔すんなよテメェ」 巷のチンピラなら全財産投げ打って逃げ出すその顔も、今のサンジにとっては愛しいばかりだ。 緩んだように笑った瞬間、ぐうっと待ち望んでいた感触がサンジの中を抉った。 「くそッ、テメェ中すげぇ熱いじゃねぇか」 いつの間にこんなエロくしてやがった、と悔しげに言いながらゾロががつがつと腰を打ち付ける。 「ふ…、あ…、あ…ッ」 そのリズムにあわせて、腹の奥から声が勝手に押し出される。 揺れる視界の正面にあるのは、汗の滲んだ男臭いゾロの顔。 あれから体位をとっかえひっかえ何度やったか。未だに体の熱は収まらず、貧欲にゾロを求めるばかりだ。 全身が痒いのか痛いのかもわからない。でも気持ちよいのは確かだ。 血のめぐりがよくなったせいか、サンジの乳首もじんじん痒くてたまらない。 さっきからゾロが動くたびにシャツが擦れて、立ち上がった先端に微かな刺激を与えてくれる。 でもそんな感触じゃ、全然足りない。 マリモはいつもここばっかに夢中なくせに、肝心な時にほったらかしとはどういうことだ。 ちくしょう。 寂しいような気分になって、サンジはそろそろと自らシャツを捲り上げると、ねだるようにゾロを見上げた。 「ぞ、ゾロ……」 腰を掴んでいる手に自らの手を重ねて、そのまま胸まで誘導する。 ツンと立ち上がった両のつぶは真っ赤で、先ほど塗られた薬剤のせいかてらりと濡れていた。 「こっちも、触れ……ッ」 ぐわっと、ゾロの顔色が変わった。 同時に突き入れられているモノがぐぐっと太さを増して、サンジが声をあげる。 ぎゅっと痛いほど抓まれた上から、ゾロの頭がそこに落ちた。 生暖かく湿った咥内に含まれて、舌先と歯で舐られる。 「ふ、ア……ッ!」 待ち望んだ、ひどく懐かしくもある感触に、サンジはうっとりとゾロの頭を掻き抱いた。 * * * 「ハゲ、マリモ、剣馬鹿、万年寝太郎、ハラマキ、穀潰し、クソエロミドリ…!」 ぶつぶつと呪いのように呟きながら、サンジが救急箱をあさっている。 甲板の隅でシャツ一枚をひっかけただけのあられもない姿でくったりしながら。 その救急箱は、動く気力もなかったサンジの所望でゾロが取って来てやったものだ。 目の前に転がる白い肌には、まだ点々とゾロの吸い跡やら互いの体液やら、情交のなごりが散っていてなかなか目の毒だ。 うっかり触ってしまいそうになる手を押さえながら、ゾロはご機嫌斜めなサンジの後姿を眺めた。 さきほどようやくお互いの熱が冷めたあと、ゾロはサンジにしこたま怒られた。 せっかく買って来てやったというのに、どうやらサンジはあの薬が気に食わなかったらしい。 しかも金輪際乳首には触れるなと戒厳令まで布かれた。 ゾロにとっては納得しがたい命令だし理由もわからなかったのだが、とりあえず今日は満足行くまで触り倒したので黙って頷いておいた。 救急箱からサンジは何やらぺたぺたっと自らの体に貼り終えると、やおらくるっとゾロを振り返った。 まだ赤味の残る頬に、乱れた金髪。 そして開かれたシャツから見える白い肌……その一点で目が釘付けになる。 「てめぇ……」 ぴき、と青筋の立てたゾロにおかまいなしに、サンジはふん、と見せるけるかのように胸を逸らした。 「どうだ、これでテメェも手出しできねぇだろう」 サンジの胸の両乳首を隠すように、ぺたりぺたりと貼られていたのは、小さなバンソウコ。 「いいか?これがある間はぜってぇ触るなよ!!」 ぎっと睨んだ目にはいつものような険悪な力がなく、ただ拗ねているかのようにしかみえない。 「あ……」 アホだ。 なんて可愛いアホなんだ、とゾロは再び今日分は使い果たしたと思っていた下半身に血が集まるのを感じた。 まるでエロ本の★マークの修正のようなそれは、小さくとがったサンジの赤いつぶを更に卑猥に想像させる。 人間見ちゃダメだと言われるものほど、見たくなるものだ。 しかもサンジは今肩に羽織っている白いシャツ以外は何も身につけておらず、ゾロに向かって開いた脚の間には先ほど散々弄ったせいか赤く色味を増した金色の茂みゾーンだってばっちり見えたままだ。 なのに乳首だけ、バンソウコ。 「……わかった…」 ぐるる、とゾロがうなる。 「触らなきゃ…何…してもいいってこったよなこんのアホコックがぁ!!」 最後はほぼ獣が吼えるように、ゾロはサンジに飛び掛った。 「ぎゃあああッ!?」 柔らかく力の入らない体を押し倒し、そのつるつるとしたバンソウコの上からがじっと歯を立てる。 舐めてしゃぶってやれば、ツンと内側からバンソウコごしにゾロの舌先を押し返す感触。 ほんのり薬くさいそれにも妙に興奮して、ゾロは夢中で乳首にかじりついた。 「ふ…ぁ、アホ、やめッ……や、こ、このアホ魔獣があああああっ!!」 サンジの悲鳴は、こうして今日も青空の下に響き渡るのであった。 |
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