Calling 7
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 道行く人々の奇異の視線に見守られながら疾走したゾロは、そのまま宿に駆け込んだ。
 蹴っても騒いでも無駄だったのでサンジは最後ぐったりと死人の振りをして身をまかせた。だって騒いだ分だけ恥かしさ倍増だ。
 ゾロの青筋の浮いて殺気立った顔では、きっと人攫いくらいには思われたかもしれない。
 宿屋のオヤジが震えながら差し出した鍵をひったくり階段を駆け上がるゾロの肩口で、サンジはうう、と唸った。
 ドアを開ければ小さなベッドがひとつ。サンジはそこにどさりと投げ込まれた。
 
「…てんめぇ!や」
 っと着いたか!頭はぐらぐら腹はイテーし物じゃねぇんだから放り投げるんじゃねぇよクソマリモが何してくれやがる!と言おうとしたのに、起き上がってギっと見上げた途端覆い被さってきたものにサンジの言葉はむぐ、とふさがれた。
 走ってきたそのままの荒くて熱い呼吸を絡めて、分厚いゾロの舌がサンジの咥内を蹂躙する。
「…っぁ……んッ、…」
 そのまま細い金糸を撒き散らして、サンジはシーツに沈みこんだ。
 
 
 重ねられたゾロの体温はとても熱い。つられるように、サンジの熱も一気に上がった。
 唇を離して見下ろすゾロの心臓も、きっと早い。
 二人分の重みでベッドがギシリと音を立てた。
 
 
「俺を欲しいって言ったな」
 目の前に、真っ直ぐで深い眼差しが迫る。
 本気の声に、サンジの喉がごくりと鳴った。
「ああ……言った」
「誰かの代わりとかじゃねぇだろうな?」
「……ばーか」
 今更念押ししてくる緑頭に、サンジは小さく笑って手を伸ばした。
 そしてぎゅう、と胸元に抱き寄せる。
 
 
「俺が欲しいのは、最初っからテメェだけだ」
 
 初めてこの手に抱き込んだその体温に、なんだか涙がでそうだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 くちゅっ、ぐちゃりと卑猥な水音。
「…うぁ…ッ」
 耳を塞ぎたくなるようなその音に目元を赤らめながら、サンジはゾロの手を飲み込んだ腰を揺らめかせた。
 
「ん……も、いいぜっ…そのまま、こいよ」
「……まだキツいじゃねぇか」
 ベッドに仰向けになっているサンジの手は頭上でシーツを握り締め、両脚はゾロに向けて大きく開いている。
 うっすら上気した白い肌にはじっとりと汗が滲んでいて、脚の間に陣取ったゾロが動かす指の動きに合わせるようにぴくりぴくりと肢体が跳ねた。
 ゾロの指を3本含んだ薄紅の口は、まるで逃がすまいとするかのようにきゅうきゅうと締まってはゾロを引き寄せる。
 反らされた白い胸にふつりと立ち上がった桃色の突起。触れようとするゾロの手を、サンジは先を急ぐように後孔に導いた。
 早く、深く、ゾロを感じたかった。
 とろりと熱い粘膜に包まれた骨ばった指。ぬるぬると滑るのは、粘着質のローションと切なげに立ち上がったサンジ自身から溢れる液体が交じり合って絡んでいるからだ。
 漏れ聞こえる音と喘ぎが、暗く部屋の熱を上げていく。
 煽られた獣のように目を光らせ、ゾロはサンジの乱れる様をじっと見つめている。
 
「ん…、もうそんぐらいでだいじょぶだって」
 はぁ、と震える吐息を零して見上げれば、ゾロの指が止まった。
 だって慣れてるから、と笑ったサンジからそのニュアンスを感じ取ったのだろう。
 サンジが、あ、と思った時には中を満たしていた指が一気に引き抜かれ、面白くなさそうに眉を顰めたゾロの太い塊が後孔に押し当てられていた。
 
 
 
 
「あ…あぁッ…!」
 ぐぐっと突き込まれてサンジの白い喉がしなる。
 流石に一気に飲み込むことは出来ずに入り口あたりで止まり、ゾロは小さく息を吐いた。
 慣らすように、熱い孔内の締め付けを味わう。
 するとふいにサンジがすう、と息を吸い込んだ。
 薄く瞼を閉じながら、精神統一のような深呼吸を数回繰り返す。
 と、きつく進入を拒んでいた粘膜の強張りがやんわりと解けた。
 驚くゾロに、サンジは青い目を開けてへらっと笑った。
 まるでよく出来ただろ?とでも言わんばかりの笑顔。
「……ッ」
 カッと腹が熱くなった。
 こんな顔を今までにあの男に晒してきたのか。いやあの男だけではないかもしれない。
 サンジをこんなに風に仕込んだ相手に、ゾロは激しく嫉妬した。
 誰かが作り上げたサンジ。そのペースを壊したくて、ゾロは解けたそこに一息に腰を突き入れた。
 
「あァッ…!?」
 サンジの目が驚きに見開かれた。
 けれど内部はぬるりとゾロを受け入れ、ひたりと吸い付くように締め付けている。
 受けなれた体に、わかってはいても苛立ちを隠せない。
 感情のままに腰を動かしかけたゾロは、しかしそこでサンジの体が強張っていることに気が付いた。
 
「おい…?」
 宙を見たままのサンジを覗き込もうとグイと重心をかければ、ビクリと不自然にサンジの体が跳ねた。
 無理やり悲鳴を飲み込んだように喉が鳴り、不安に揺れた瞳がゾロの顔と繋がった体の部分を確かめるように行き来する。
「どうした」
「わ、悪い……ッ」
「いや…もしかして痛ぇのか?」
 サンジはふるりと首を振って、恐る恐ると言ったようにゾロを見上げた。
「違う…その、なんだコレ、熱いの、ゾロ…?」
「……は?」
 コレ呼ばわりされたのはもちろん、ゾロの息子であろう。
 確かめるように力を込めたのか、いきなりきゅうっと絞られて「何しやがる!」と抗議の目でサンジを見れば、当のサンジもびっくりしたらしい。
 眉をしかめたゾロをしげしげと見つめている。
「…なんだ」
「あ…わり、なんでもねぇ」
 ゾロの視線に、慌ててサンジは目をそらした。
 
 力を抜いてシーツに沈んだサンジを、ゾロはじっと見つめる。
 ゆるり、と動き始めれば、サンジは唇を噛んで声を押し殺した。
 それでも抑えきれない喘ぎは唇をこぼれ、甘くゾロの耳を打つ。
 しかしぎゅっとシーツを握り締めた手は、よほど力を込めているのか白くなっている。
 
 
「……」
 ゾロを包んだサンジの内部はやわらかく熟れている。
 ぎゅうぎゅうと収縮する肉はゾロを蕩かせて離さない。
 しかしそれに対してサンジの体は、よく見れば小さくふるふると震えている。
 まるで痛みを堪えて差し出すような、そんな態度にゾロの眉間の皺が深くなる。
 
 大きく足を広げて惜しげもなく晒された体。
 男を飲み込むことに慣れた後孔。
 なのにゾロを誘ってしかるべき手はゾロを抱き寄せもせず、頭上でシーツを握ったままだ。
 慣れた体に反してサンジの態度は、まるで初心な女のようだ。
 
 体は許しても、心はゾロを受け入れてないということなのか?
 …いや、受身であるけれど、自分から何をすればよいのかわからない。
 怖いとも言えず必死に耐えている……そちらの考えの方があっている気がした。
 体に対してそのあまりにも不慣れな態度に、ゾロは思わず口を開いた。
 
「おいテメェ、あいつとはヤってたんだろう…?」
「……?」
 荒い息を吐きながら潤んだ目線をさ迷わせたサンジがゾロを見上げた。
 ふわふわしていた意識は、ゾロの質問の意味にしばらくして気付いたらしい。晒された白い首筋が突然カァッと赤く染まった。
「いきなり、なにッ……」
 正気に戻った青い目が、揺れながらゾロを睨んだ。
 
 
 
 
 受けることには慣れている
 けれどギンとの行為ではサンジは常に手足を拘束されていて、抱き合ったことはなかった。
 またギン以外、他の男は勿論女性とも性交の経験はない。
 ゆえにサンジの知識はまっさらのままと言ってもよかった。
 後孔に異物を受け入れる行為に慣れてはいても、生身の相手を受け入れたことなどないのだ。
 手足をどこに置けばいいのか、どういう態度で相手と向き合えばいいのかなんて、わかるはずもなかった。
 戒めなどもうないのに、この数年ずっと慣らされ覚えた体位のまま、ゾロと向き合った。
 
 けれど今更そんなこと、ゾロに言えるはずもない。
 
 
「ああやってたさ…いつもこうして奉仕させてやってたんだよ」
 思わず出た強がり。
 睨み上げたゾロの目が、すぅ、と細められた。
「へぇ、そうかよ」
 





*8へ*



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06.07.02