SEMI   sideZ
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生まれた瞬間から、吼えていた。
虚空を見つめ、歯を食い縛り、世界の果てを見据えるように、戦っていた。
敵は見えない強大な力であり、自分自身でもあった。
ギラギラと照りつける日差し、額を滑る汗が開いた両目をなぞって落ちていく。

周囲には沢山の仲間が一斉に歓喜の声をあげ、互いの熱を奪い合っている。
そんなものには興味がない。自分が生まれてきた意味は、こんな所にはない。
まとわりつく女の手を払い、ひたすら前方の、見えない敵を斬る日々。
向こうの方で、ひときわ浮ついた声で女に媚を売っているやつがいる。
やたらと耳につくその声に内心舌打ちをして、俺は突き刺さる日差しを睨んだ。


気づけば俺は、黙って暮れる夕日を眺めていた。
辺りはいつの間にか静かで、あれだけ居た仲間も、煩い叫びも聞こえない。
梢を揺らした風が、いつの間にかひやりと冷たい。
あれからどれだけ時間が経ったのだろうか。
勝手に役目を終えたと満足して落ちて行った者たち。
過ぎ行く季節に自分達がしがみ付いていられる時間は、あまりにも少ない。
孤独には慣れている。
自分は、まだまだ戦える。
口を噛みしめ、冷えてきた体に拳を固める前に、ふと誰かが肩にもたれた。

見ればいつも視界の端で煩く鳴いていたアイツだった。
その体も驚くほど冷たくて、けれど、合わさった肌の間が酷く熱をもった。
そのあたたさに、なぜか振り払う力が失せた。

なあ。

呟いたアイツの体が夕日にキラキラと透ける。

もう、俺にしとけよ。

なあ。

女を口説いていたその甘い声で、酷く穏やかに笑う。

触れ合った二つの体の中心が、夕日以上に熱く燃える。
たまらなくなって、俺はその唇からなき声を奪った。








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蝉Deゾロサン。蝉擬人化という新しいジャンルに挑戦しました。
秋も間近だというのにずっと鳴いている蝉がいまして、
こんな時期にもう恋の相手なんていないのに可哀想な子…いやでもだからこそ!?
と脳内でせめてもと昇華させて書きました。

10.03.06