某角●文庫のCMパロ。 |
「あー…、チョッパーのやつ忘れてったな」 宴会が終わって皆が引き上げた後、アパートの自室を片付けていたサンジはぐしゃぐしゃに重なった座布団の間から出てきたものを見て頭を掻いた。 埋もれていたのは聴診器。 こういう医療器具の持ち主といえば、青い鼻が真っ赤になるまで呑んでいたあの医者志望以外に他ならない。まあ明日返してやろう。 そう思ったサンジだが、しかしふと思いついて、医者がするようにそれを耳に掛けると銀色の丸い部分を自分の心臓に押し当ててみた。 ドクン……ドクン…… 「うお!すげーっ」 自分の鼓動が大きく耳の奥に響いて、サンジは喜びの声を上げた。 新しいおもちゃを見つけた子供のように、目がきらきらと輝く。 きょろきょろと辺りを見渡し、本棚の中から普通の雑誌の奥に隠してあったお気に入りのグラビアを出して床に広げ、聴診器はそのままにぱらぱらページをめくった。 お気に入りのレディの、脚を大きく広げた刺激的なポーズが目に入る。 ドクン、ドクン、ドクン… さっきよりも早くなった自分の鼓動に、サンジは嬉しくなってさらにページをめくった。 すると、ページの間からパラリと1枚の写真が落ちた。 手に取ると、そこに写っていたのはでどこか仏頂面をした緑頭の、同じ大学に通う幼馴染の男。 酒瓶片手に盛り上がる仲間たちを横目に、真っ直ぐに不敵な目線をこちらに寄越している。 ドクッ、ドクッ、ドクッ… 途端に早くなった自分の心臓の音。 サンジは聴診器を当てたまま目を見開き、呆然とへたり込んだ。 「まさか…俺って…」 * * * ガチャ、とアパートのドアが開いたのはその時だ。 びくっと振り返ったサンジを同じように驚いた視線で見つめたのは、今写真の中にいた緑頭。 心臓が耳の奥で早く大きく音をたてて、サンジはかーっと頬を染めた。 「てめぇ…」 ゾロは愕然としたようにサンジを凝視したままドアを閉めると、ずかずか部屋に上がってきた。 「な、て、てめ、帰ったはずじゃ…っ」 弾かれたように写真をグラビアに挟んでバンッ!と閉じたところで、ゾロのごつい手に腕を掴まれた。 反射的に逃げ出そうと腰を浮かせた体は、そのまま力づくでゾロの正面に引き戻される。 目の前に、ぎらりとした強い瞳があった。 「こういうのが、好きなのか」 「な、なにがっ……」 ゾロの手がサンジの首に掛けられた聴診器をつまむと、すい、と薄いシャツの上を滑った。 平たく丸い金属がサンジの心臓の真上を通り、そしてふに、とやわらかな胸の頂点で止まる。 「っ…」 ぴくん、と思わず揺れた呼吸を、真正面にいたゾロが見逃すはずもない。 「……テメェ…」 「な、なんでもねぇよ!てかテメェの顔、なんかやべぇって!!」 先ほどの宴会でさほど酔った様子もなかったゾロが、今血走った目をサンジに向けている。日焼けして分かりにくいが、どうやら耳の先までサンジと同じく赤い。 暴れるサンジを押さえ込んで、ゾロの手ががガバッとTシャツをたくしあげた。 「ぎゃッ!?」 露になった白い肌は、羞恥でほんのり赤く染まっている。 その中でツンと一際赤く立ち上がっていた粒を、ゾロの太い指が押しつぶした。 「や、やめ…」 払いのけようとするサンジの手をむずがる子供相手のように軽く一まとめに押さえ込んで、ゾロは怖いほど真剣にサンジの乳首を凝視している。 むにむにと捏ねられれば、サンジのそこはますます硬くゾロの指を押し返す。 ひやっとした感触。 見ればゾロが聴診器をサンジの肌に直に押し当てている。 「……なんでこんなに早ぇんだ」 心臓の真上にある聴診器。 ゾロは耳に受診部分を装着してはいないけれど、激しく高鳴るサンジの心臓は聴かなくたってその振動が触れているだけのゾロの指にも丸分かりだ。 少し汗ばんだゾロの指も、ジンジンと熱い。 「き、聞くな……ッ」 赤く染まった顔を反らせば、クソッと小さな声とともにゾロの太い指がサンジの顎を掴みあげた。 「……!」 そのままぐっと上を向かされた途端、唇が柔らかいものでふさがれる。 荒々しく重なって離れたゾロの唇。 ぼんやりと夢心地で離れたその感触。 ふうふうと獣のように息をつきながら、ゾロがじっとサンジを見つめている。 自由になった手で、サンジはそっと聴診器を手にとった。 それをゾロの胸、心臓の真上に押し当てた。 ドッドッド、という早い、ゾロの鼓動。 「…何でかなんて聞くんじゃねぇぞ」 ぶっきらぼうに、でも照れたように口をとがらせるゾロに、サンジは笑って聴診器を投げ捨てた。 ゾロの背に手を回すために。 |