ぞろさん は たてまえ を おぼえた! |
「俺は今日一日、お前の言葉を全部受け止めてやる!」 華麗に、真逆に!! 朝一番に重い殺気と蹴りで叩き起こされたと思ったら、甲板で何やら得意げ叫んで見下ろす阿呆が一人。 ゾロは大きな欠伸をすると、朝日に眩しい金髪に向かって呆れたため息をついた。 「…前からわかっちゃいたが、頭おかしいなお前」 「ふふん、バージョンアップした俺様はそんなお前の馬鹿な言葉すら愛しいぜ」 「二年分更にグルグル巻いたのは眉毛だけじゃなかったのか」 「そうかそうか、そんなに俺様が格好いいか」 …どうやら何を言っても無駄らしい。 全く、何年経ってもこの阿呆さは変わらない。 毎年この船の狙撃手の生まれた日になると、いつもこうだ。 何でも相手の言葉が真逆の意味になるとかいう……。 ふと思いつき、唇の端を緩く持ち上げてゾロは笑った。 「そうか、可愛いなぁお前」 「そうだろそうだろ、て、ぇ?」 ゾロは手を伸ばすと、目の前の男の腕を掴んでその腰を抱き寄せた。 「じゃあ俺も今日一日、素直になってやろうか」 「は?」 「お前のそういう阿呆具合が、たまらねぇな」 言いながら、呆けた唇にキスをひとつ。 「今日も愛してるぞ」 「なっ…あ!?」 赤い顔で固まる男の首筋をするりと撫でて、ゾロは小さく笑う。 「お前の美味い飯が冷めちまうんだろ、行こうぜ」 「ッ!くそ、てめぇ…!」 ぷるぷると震えたサンジが、言葉よりも先に足を上げた。 「新手の嫌がらせか!それ全部真逆の意味に取れって事か!?チクショウ受けて立つ!!もっかい言ってみやがれッ」 「好きだ。だから朝飯の後にお前も食っていいか」 「阿呆はテメェだ!!」 「……なにあれ」 キッチンで待ちながら、近づいてくる喧騒に呆れるナミに、ロビンが笑った。 「聞きたい人と言いたい人、お互いに良い建前が出来たって事じゃないかしら。流石に二年も経つとエイプリルフールのパターンも違ってくるのね」 「結局ただの馬鹿同士ってことでしょ」 END |