カレシがアイルケみてきたら。 |
「いいなぁ〜vvああいう恋って」 深夜のキッチンで晩酌をちびりちびりとやっていれば、目の前でコックがメロっとした声を上げた。 今日港でナミと観て来た映画が随分気に入ったらしい。 「あー俺も可愛いレディに言われてみてぇなぁ」 「『私を殺して』ってか?殺せねぇだろ、テメェ」 さっきから散々聞かされたその内容はゾロにとってみれば随分どろどろした痴情のもつれでしかない。 「ばっかテメェ、男なら一生に一度くらいは『私と死んで〜』とか言われてみてぇじゃねぇか」 「そんなもんかね」 「こーれだから情に疎い淡水生物はよぅ」 サンジはテーブルを挟んでゾロの目をひたりと見ると、わざとらしく誘うような目線でゆったりと囁いた。 「『俺を殺して?』」 それは晩酌後の内容を指しての誘い文句なのかとしばらく考えて、 ゾロは手にしていたグラスをぐいっとあおった。 「……殺そうと思ったって、素直に殺されねぇだろうが」 途端にサンジはぎゃはは、と深夜だというのに盛大に噴き出した。 だいぶ酔いも回ってきたらしい。 「はッ、あったりめぇだ!野郎なんて返り討ちだぜ」 くっくと先ほどのしなやかさなんて微塵も見せずにガラ悪く椅子にひっくり返って笑うサンジに、 ゾロは空になったグラスの代わりにその小さな頭を引き寄せた。 「殺してテメェが手に入るなら、いくらだって殺してる」 潤んだ青い目が、まぁるく見開かれている。 その目の端と首筋がじんわりと赤く染まって、 こんなの酔いのせいだ馬鹿野郎!と騒ぎ出す口を ゾロは手慣れたタイミングで塞いだ。 |